好きで使える軽いものたち

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最近ボンクの影響でしっかりとした革靴のデザインや作りに魅せられて、本を見たり、実際に手に入れて履いたりして、とても満足しながら、もっと良い靴が欲しいと思っているトロンコです。

 

そんな革靴への情熱も暑さには勝てず、夏になると履いていて涼しげな靴を選んでしまいます。

ボンクは昨夏ジャックパーセルをよく履いていたし、トロンコの場合はビルケンシュトックのロンドンというクロッグにかかとがついたような靴を履きます。

幅が広くゆったりとしているので、涼しいし、見た目も重くありません。

トリッカーズを履くようになって、冬は履かなくなったビルケンシュトックに夏は戻りたくなります。

ビルケンシュトックを履いて歩いていると、裸足に靴底だけつけて歩いているように思えるほど足が自然な形で、一切の無理がかかりません。

足を完全に包み込んでくれる上質なフィット感を感じさせてくれる靴の魅力は素晴らしいけれど、夏はビルケンシュトックの良さを再認識する季節なのだとトロンコは思いました。

 

靴が変わると鞄も変わります。

カッチリとした総革の鞄はビルケンシュトックには合わないし、夏という季節にも合いません。

もう少し軽い布製のトートバッグを使いたくなります。

昔からあるL.Lビーンのトートバッグをトロンコは愛用しています。

オーソドックスなデザインにとても厚く丈夫な生地を使っていて長く使うことができ、頼めば名前なども入れてくれる。

値段は安いけれど、昔からある定番の鞄で、形も全てのトートバックのお手本のような形の鞄は使う喜びもあります。

 

季節によって靴と鞄が変わるように、万年筆ももう少し軽いものを使いたいとトロンコは思いました。

軽い万年筆で最も優れているのはラミーサファリだとトロンコはいつも思っています。

万年筆としては低価格だけど、安い万年筆を使っているという気持にさせないところはL.Lビーンのトートバッグやビルケンシュトックの靴と同じ価値を持っていると、トロンコは思っています。

 

サファリは筆記具や万年筆とは違うカテゴリーのサファリというジャンルだと思えるほど、他のものとは違う、万年筆らしくない独特の存在感を持っています。

ステンレスのペン先は硬いけれど滑らかに書くことができます。

ステンレス自体柔軟性のある素材ではありませんので、これを柔らかく仕立てようとしても無理があって、強い筆圧をかけるとペン先が開いて戻らなくなり、インク出不良の原因となります。

 

それよりもサファリのように潔くステンレスのペン先らしい硬さをもって仕上げられた方が、長くトラブルがなく使えるのではないかと思えます。

他の筆記具メーカーは安くて良いものを作ることがとても上手だけど、それは高級万年筆の安い代替品でしかない。

軽快で気兼ねなく、でもこれが好きで使っていると思える万年筆を目標に作ったらこの値段で作ることができましたという、サファリのような存在の万年筆はとても希少で、服装や持ち物が軽くなる夏の季節に、ビルケンシュトックやL.Lビーンと同じように手に取りたくなるものだとトロンコは思いました。

 

 

 

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ボンクの贅沢

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ボンクは何年も使っているナイロンのトートバッグに荷物を詰めています。

80年代フランス製スタンスミスにロールアップさせた60年代の古着のデニム、デニムの後ろポケットにはサマーオイルメモノートとペリカンM300、何年着てもよれないグッドウェア製のTシャツ、パテックフィリップのアクアノート。

ボンクの海スタイルです。

 

これからの時期ボンクはよく海を見に行きます、特に目的はありません。

気が向いたら本を読んだり、写真を撮ったり、朝から日が沈むまでひたすらボーっとしたり。

よく行く場所が何か所かあり、その日の気分で場所を選びます。

 

ピンクの海

この場所はよくボンクが写真を撮りにくる場所です。三方を山に囲まれた小さな漁師町で、沖には2つの島が浮かんでいます。

お店もほとんどなく、漁師さんたちが気軽に声をかけてきてくれるのどかな町です。

ここは潮の流れも緩やかで、夏場は風もそれほど吹かず海が荒れることはほとんどない場所です。

その日の雲の量によって変わってきますが、太陽が落ちていくに連れ空がピンクに染まり始めます。この時の空の変化はとても激しく、もう二度と見られない空の模様が次々と過ぎていきます。

そして太陽が海に落ちる前後のほんの数分間、空の色が海に写りこみ海面が一面ピンク色になります。ここへは、このほんの数分間を楽しみに行くのです。

 

バルコニーからの眺め

ここは船乗りなら誰でも知っている世界でも有数の海の難所。

とても狭い海峡にいくつもの小島がありまた大きく湾曲していて、潮流は速く、小島の影響により複雑な流向・流速で、大潮時には流速が10ノットにもなることがあります。

その狭い海峡に浮かぶ小さな島にあるホテルのバルコニーからは、海峡を渡す大きな橋、とても速い潮の流れ、小さい漁船から大型船までたくさんの行き交う船を見ることができるのです。それもすべて目の前で。

週末やバカンスシーズンには橋がライトアップされとても幻想的な景色を味わうことができます。

部屋の窓を開け、夜通し走る船の音を聞きながら眠る。ここでのボンクの楽しみ方です。

 

気に入ったスタイルで海を見ながらボーっとする。ボンクの最高の贅沢です。

 

 

 

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地図を買って旅に出る

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トロンコはヨーロッパの地図を買いました。

ヨーロッパと言っても中央ヨーロッパのもので、チェコ辺りに中心があり、北欧が入っていないし、スペインも途中で切れています。

でもこの地図を見ていると国と国とが海で隔てられておらず、地続きになっていることがよく分かります。

 

20年ほど前にヨーロッパを分断していたイデオロギーによる境がなくなっていますので、国境をパスポートを見せるだけで通ることができるようになりました。

ある程度の規模の街だと空港があって、ヨーロッパ内の移動でも飛行機の方が断然便利ですが、ヨーロッパ内を旅する人で、車を使う人は今だに少なくないと言います。

もちろん料金的な問題もあってのことかもしれませんが、充実している高速道路網を使って旅をする方が旅情をより味わうことができるからだとトロンコは納得しています。

確かに飛行機で3時間くらいのところを車で丸2日かけて走るとそう思うのは当然だと思います。

 

地図を手に入れたトロンコは、島国を出てヨーロッパを車で旅したくなりました。

トロンコはハンドルを握ると人が変わる方で、それはお父さん譲りの体質です。

前に車がいると抜かしたくなりますし、アクセルの踏みしろが残っているとさらに踏みたくなる。

目標とする距離が長くなれば長くなるほど、スピードを上げて走りたくなります。

 

いくらでもスピードを出すことができるアウトバーンをひたすら走って、国から国を越えていく。

こうやってヨーロッパを移動していると、国と国が密接に繋がり合って、経済や政治そして人々の生活が成り立っているのだと思います。

でも国と国が地続きで協力し合っていたとしても、国境を侵されない注意だけは怠らない。

陸続きであるからこそ、それぞれの国の人たちが自分たちの国のアイデンティティーに誇りを持ち、自分たちらしくいる強さを持っている。

そんなヨーロッパの国々を見ていると、トロンコが住む島国は他の国と地続きになっていないという自然に守られている気楽さからか、国境を守ることに甘さがあると思えるのです。

周りの国とは協力関係を築いて、ともに良くなる努力をしていかないといけないけれど、自分たちの国民らしさ、誇りそして国土は厳格に守るべきものだと思うのです。

 

車の旅では横を向いて景色は見ることができませんが、他の車が目に入ることがあります。

他の車を見ながら、トロンコは車と万年筆について考えました。

車と万年筆は非常によく似ていると常々思っています。

それはともにお国柄が非常によく表れているというところと、それぞれのメーカーのあり方、考え方が万年筆にも車にも存在するというところからですが、車も万年筆も同じくらいの歴史を持っているからなのかもしれません。

 

例えば、モンブランとメルセデス・ベンツ。どちらもステータス性の高いドイツのメーカーで、時代を追うごとにどんどん洗練されていく。

フォルクスワーゲンはペリカンなのかもしれません。

フォルクスワーゲンは、多くのモデルを発売している大衆車メーカーで、ステータスとは程遠い実用車の生産に力を入れている。

万年筆を道具とこだわっているペリカンも用途による大きさの違うモデルを数多く発売しています。

 

トロンコの愛車ポロはペリカンで言うとM400かもしれない。

コンパクトで小回りが利き、ここぞという時にアクセルを踏み込むとそれに応えて本気を出してくれる。

ポロがM400ならゴルフはM800かな。

そういえばフォルクスワーゲンはスポーツカーのポルシェを傘下に持ち、ペリカンはポルシェデザインのペンを作っているのは面白い偶然。

 

イタリアの万年筆メーカーアウロラは同じトリノのフィアットと言いたいところだけどアルファ・ロメオの方が近いかもしれない。

どちらも根強いファンに支えられている。

エレガントでライティングジュエリーと自称するモンテグラッパはフェラーリかマセラッティ。最近シルベスタ・スタローンが筆頭株主になって、その度合いがさらに増してくるのかも。

 

フランスに目を向けると、S.Tデュポンは、他に似ていない車作りをするシトロエンとイメージが重なります。

日本の堅実は筆記具メーカーパイロットはトヨタとキャラクターがカブる。

本業以外でも実績を出して手広くやっているところも似ている。

そんな風にトロンコは大好きな車と万年筆について考えながら、アウトバーンの

長いドライブを楽しむのでした。

 

 

 

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大切な時間

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仕事の合間や帰りにボンクはよくカフェやバーに立ち寄ります。

何も考えずリラックスして本を読んだり原稿を書いたり・・。良い雰囲気のお店であれば仕事の打ち合わせや商談にも使います。

 

ボンクが本を持ってよく行くお店は2軒ほどあります。

一軒は、お店の大部分を鉄道模型のレイアウトで占められているカフェ&バーです。広いレイアウトには漁師町や田園地帯の田舎町から都会の風景まで再現されていて、いろいろな列車が走っています。

 

また鉄道や旅にに関する本もたくさんあって、走っている列車を見ながらコーヒーやお酒を飲み旅の本を読む人達もたくさんいます。

もちろん、ボンクもその一人です。

 

ボンクが気に入っているのがお店の演出は、外の時間に合わせて照明や走る列車が変わっていくところです。

夕方から夜にかけて照明が徐々に落ちていき、寝台列車が走り始めます。

それに合わせてお客さんの飲み物もソフトドリンクからカクテルやウイスキーになります。

カップルで来ている人達の会話の内容も変わってくるでしょう。

そんな雰囲気の中で好きな本を読む、ボンクには最高の時間です。

 

2軒目は本と酒と珈琲を一つの空間に上手く組み合わせたカフェ&バーです。

席に座って鞄から自分の本を取り出し読んでいる人、本だけを手に持って入って来る人、このカフェで自然にかたわらに置かれている古本を手に取り読んでいる人、昼間にひとりでやってきて、ビールを飲みながら静かに読書を楽しんでいる人。

それぞれ自分の、本を読むスタイルを持っている。

 

そのお店は築30年以上経った古びた雑居ビルの中にあって、オーナーのセンスで置かれた古びた家具やトランク、オブジェも手伝い店内は独特の雰囲気で、そういうのが大好きなボンクにはたまらない空気感が漂っています。

 

トロンコもボンクも本を読むことがとても好きでたくさんの本を読みます。

二人にとって本を読む時間はとても大切な時間です、読む場所や雰囲気も。

 

二人の本を読むスタイル、読む場所や雰囲気も考えこだわった文庫本カバーが間もなく出来上がります。

 

 

 

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雰囲気を作りたい

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人と人の間を結んだり、情熱を伝えたりすることが上手な、コミュニケーション能力に長けているボンクのことを尊敬していました。

ボンクが興味を持っていつも見ている、表に出る人をサポートしている人たちの仕事とは、そういった能力がとても大切なのだと思います。

 

トロンコは今ないものを作り出すようになりたいし、いつもそうありたいと思っていました。

ないものを作り出すということは、それが正解か間違いか○と×で判断されないからです。

 

正解を出すことがトロンコは苦手でしたし、そもそも興味がありませんでした。

自分の心や頭の中に浮かんだ自分にしか作り出せないもの、正解か間違いかを人に判断されないものを作る、あるいはそういう仕事をしたいといつも思っていましたが、それはトロンコの変な偏った性質によるものなのかもしれません。

 

トロンコは子供の頃から人から聞いた話を違う人に伝えたり、自分が読んだ本や観た映画の内容などを人に伝えることがものすごく苦手でした。

人から話を聞いていても、途中でその人が何を言っている分からなくなるし、理解していると思っていた話でも人に話しているうちに分からなくなってしまう。

トロンコが読んだ本の内容を話しても、それが本当にその本の内容に沿ったものかどうかはあまり信じない方がいいかもしれません。

(それは読んだ本の内容を、その本の言葉を目にしてトロンコの頭の中でトロンコ流に解釈した別のものになっていることがよくありますので)

 

トロンコはそれほど、何かを正しく伝えるということが苦手でした。

当然、学校の勉強はとても苦手で、嫌いでしたので成績も悪かった。

トロンコに、勉強して偉い人になって欲しいと思っていたお母さんはそんなトロンコにがっかりしたけれど、人と違っていても不安に思わないトロンコの性格には早くから気付いていて、頼もしくも思っていました。

子供残して早くに亡くなりましたが、トロンコのことはあまり心配に思っていなかったようです。

 

勉強が嫌いで、お母さんをがっかりさせてしまったトロンコでしたが、本を読みなさいと言った忠告だけは喜んで守っていました。

 

トロンコが活字を読むことはほとんど中毒だと言えるくらいです。

トロンコの読書は変わっていて、たくさんの本を読むのではなく、気に入った本の同じ文章を何度も読んで、その文章の雰囲気とか、自分の心に及ぼす作用を楽しむのです。その文章の世界に入って遊ぶのが好きでした。

それは知識を増やしたり、考え方の幅を広げるような読書と違っていたかもしれません。

紀行作家であるトロンコも、自分の文章に独特の雰囲気があって欲しいと思いましたし、好きで何度も読んでもらえるものを書きたいといつも思っていました。

 

強烈なメッセージや誰もが知らない知識が得られるものではないけれど、心のどこかに作用して、何らかの気持が得られるものをトロンコは目指しているのです。

 

 

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支える人たち

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仕事柄ボンクはたくさんのクリエイターやアーティスト達に会います。

モノ作りをしている作家、音楽を作っているミュージシャン、料理人など。

夢を叶えた人、夢を追いかけている人、夢をあきらめた人。

 

トロンコとモノ作りを始めてから、ボンクは今までとは違った感覚でモノを見たり、音楽を聴いたり、食べ物を味わったりするようになりました。

 

それぞれどのような過程で作られたのか、どんな作家がどんな気持ちで作ったのか(モノや歌、料理を通して何かを伝えたいのか、ただ売れれば良いのか)。作られた背景や作家の思いもそうですが、今ボンクがなによりも興味を持っているのが作家をサポートする人達です。

 

ボンクはスポーツ観戦がとても好きでよく球場や体育館などに行きます。

 

スポーツ観戦といっても楽しみ方は人それぞれで、純粋に試合を観にいく人、好きなチームを応援しに行く人。

ボンクの楽しみ方は試合を観るだけではなく、例えば野球だと真剣勝負をしている選手と何万人というファンが一体となる独特の雰囲気や感動、またそれをサポート(演出家)している人達を見に行くのも楽しみの一つなのです。

 

球場に着きまず目に入ってくるのが、試合のポスターやチラシです。

あるのと無いのとでは選手や観客の盛り上がりが全く変わってくるのです。これを作っているのが試合をサポートする人達です。

 

公平にジャッジする審判の人達、選手が良いコンディションでプレーできるようにグランドの整備をする人達、選手とお客さんが盛り上がるようにタイミングよくアナウンスをしたり音楽を流したりする人達。

いくら一流選手達が揃っていてもサポートをするそれぞれの分野の一流の演出家達がいなければ選手もお客さんも盛り上がらないどころか試合もできません。

たくさんの演出家が一体となり選手達が真剣勝負が出来る場所を作っている。

お客さんを楽しませる場所を作っている。

 

モノ作りをしている作家、音楽を作っているミュージシャン、料理人、それぞれ活動している場所や目指していものは違っても、スポーツ同様サポートをしてくれる人達が同じ方向を向いていることで一つのモノが完成しお客さんの気持ちを満たすことができるのではないかとボンクは思っています。

 

トロンコとボンクのモノ作りもたくさんの人に支えられています。

モノ作りの本当の主役はサポートをしてくれている人達なのかもしれません。

 

 

 

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仕事について考える

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汽車に乗った時など、トロンコはよく考えごとをします。

単純な思考のトロンコですが、理屈っぽいことを考えるのは好きで、よく何の役にもたたないことを考える。

今回は仕事について考えていました。

 

トロンコは自分のような仕事(紀行作家なのです)の人はけっしてたくさんいるわけではないだろうと思っています。

そして同業の人がたくさんいないことで不安に思ったり、同じ仕事の人と集まってグループのようなものを作ろうとも思いませんでした。

他の人と集まりたかったら、そもそも一人で仕事をしようと思わないからです。

 

皆がしていない仕事だということを不安に思う人も確かにいます。

トロンコがこの仕事をはじめようと思っていることを、トロンコのことを心から心配してくれるお父さんに相談したら、トロンコがやろうとしていることはあまり他では聞いたことがないから、それで生きていけるのか心配だと言われました。

確かにお父さんの心配はもっともで、お父さんは同じ仕事の人が少ないことに漠然と不安に思ってくれていて、トロンコのことを心配しているからこそ、親身になって考えてくれているのです。

 

でもその時トロンコは自分がこれでしか生きていくことができないということを、そしてこの仕事の中には自分の居場所があるということで迷いはありませんでした。

お父さんが心配したような将来性や安定性は考えていなかったけれど、自分の仕事を見つけるのではなく、作るのだとなぜか思っていたのです。

 

実際仕事を始めてみて思ったことは、仕事とは自分でマーケットを作ることだということでした。

別に大きくなくてもよくて、どんな深さのところでもいい。

どこかに自分が存在すべきマーケットを作って、そこに存在する。

 

マーケットは海のようなものだとトロンコは思うことがあります。

すごく広くて、深い。

浅いところに自分のマーケットを定めてもいいし、深いところでもいい。

浅いところはたくさん人がいて、大きく広い。でも、たくさんの人がそこで仕事をしようとするから競争が激しい。

 

深くなれば深くなるほど、競争はなくなっていくけれど人が少なくなる。

どこか自分の考えに合う深さを決めて、そこを自分のマーケットにするのが、自分の仕事を作るということなのかなとトロンコは考えます。

 

トロンコはこういうことを考えるのが好きでよく考える。

こう思ったところで、何かを得られるわけではないけれど、自分の生き方や仕事の仕方の再確認をしたような気持ちになります。

 

フィレンツェにいるクワドリフォリオのご夫妻も、ボンクもペンショップの女店主さんも木工家もみんな自分のマーケットを見つけて、そこを仕事の場所としている。

皆がしていないからそこが自分の場所になるのだと思うと、トロンコは自分の仕事の仕方について、少しゆったりとした気持になるのでした。

 

 

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フィレンツェの工房へ

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トロンコとボンクは革工房クワドリフォリオのご夫妻を訪ねてフィレンツェにやって来ました。

トロンコがフィレンツェを訪ねるのは2回目、ボンクは数え切れないほど来ています。

トロンコはフィレンツェの街が大好きでした。

世界中から観光客の人たちがたくさん訪れて、皆がとても楽しそうにしています。

この街を訪ねる人たちは誰もが幸せそうにしていて、それがこの街の雰囲気になっているのです。

この街の雰囲気に身を置けることがとても幸せに感じられました。

観光地を侮る人がいますが、トロンコは観光地には観光地の楽しさがあると思っています。

 

でもこの街で見られる幸せは、皆がそれぞれの人生の中でも最も幸せだと思っている時間で、日常に戻ればまた静かで厳しい時間の中に身を委ねなければならない。

そう、自分の力で生きていくということは厳しいことだとトロンコは思います。

沈鬱な低い空のトロンコの祖国に比べると楽園のように見えるこの土地にも、模造品の絵画を警察の目を盗んで露天で売るアフリカ系の若者たちや、物乞いのジプシーの少女がいる。

毎日4時間も昼寝して、週末にいつもピクニックに出掛ける優雅な生活をしているように見えるクワドリフォリオのご夫婦もきっと大変だったと思います。

フィレンツェには世界中から革製品の作り方を習いたいと思い若者が集まっていますが、クワドリフォリオのご夫妻も同じく祖国を飛び出して来たのです。

 

言葉もあまり話せないまま、革の扱い方を習いたいという情熱だけを持ってフィレンツェに来ました。

自分たちで教えてくれる師匠を見つけて修行させてもらえるようになって、二人で工房を始めることができるようになったのも、二人に四葉のクローバーがついていたのかもしれません。

 

ラッキーな二人はもちろん大変な努力もしてきただろうし、将来に対する不安もあると思うけれど、そんなことを全く表に出さずとても明るく愉快です。

トロンコとボンクは二人のそんなところが好きで、一緒に革製品を作りたいと思ったのでした。

 

まずはフィレンツェのしぼり技法を生かしたペンケースを作ろうということになって話し合いました。

 

基準になるペンのサイズ、形状など朝から晩まで話しました。

ペンケースの仕様が決まったのは夜遅くでしたが、4人はとても楽しく話をして、時間はあっという間に過ぎていったのでした。

クワフォリフォリオのご主人は靴を専門に作っていて、靴が好きなボンクとトロンコはクワドリフォリオのご主人が作る靴もいつか履いてみたいと思いました。

ご夫妻はしばらく時間が欲しいと言っていましたが、トロンコとボンクはいつまでも待つつもりでした。

なぜならクワドリフォリオご夫妻はイタリアの時間の中で生きているのですから。

 

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理想のペンケース

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ボンクは机の上の10本の万年筆をぼーっと見ていることがたまにあります。
ぼーっと見ていると一本一本手に入れた当時の時代背景が蘇ってきます。
どんな時代だったか、そのときどこで何をしていたか、当時周りにいた仲間や恋人の顔など・・・10本の万年筆が10枚の写真を見ているような感覚になるのです。

トロンコとボンクそれぞれの机の上には10本の万年筆を収納することができるコンプロットという名前の木製のペンケースが置いてあります。 二人の机を作ってくれた木工家のコダワリが詰まったペンケースです。

それぞれのペンケースに入っている万年筆は決してマニアが喜ぶような希少価値のある万年筆ではありませんが、二人にとっては一本一本に思い入れがあり、どれもよく使い込まれています。
そんな10本の中からその日使いたい万年筆を選ぶことが二人の毎朝の日課になっています。

外出先でも頻繁に万年筆を使うトロンコとボンクにとって、万年筆を何本か収納できて、鞄に入れて持ち歩けるペンケースはとても重要なアイテムです。
荷物を極力少なく、軽くしたいボンクは普段ソフトなレザーが使われている3本差しのペンケースを使っています。
ボンクのペンケースには中字、太字の2本の万年筆と、ボンクがいつもつけている香水を入れたアトマイザーが入ってます。
ジャケットの内ポケットにも入る薄型ですが、ペンをしっかりと保護してくれて、ペンが落ちないようフラップもついています。ペンの出し入れもしやすく、デザインもシンプルなのでどんな場所へでも持って行けます。 これ以上改良する点がないくらい完成度が高くボンクはとても気に入っています。

トロンコもボンクも今までいろいろなペンケースを見て使ってきました。
デザインが優れているモノ、実用性が高いモノ、凝ったつくりのモノ、素材や細部のクオリティにこだわったモノなど、安価なものから高価なものまで市販されているペンケースはどれもよく出来ています。
しかしボンクはいつも物足りなく感じていました。

インク作りで知り合ったフィレンツェに工房を持つ革職人夫婦に作ってもらうために、トロンコとボンクは自分達の理想のペンケースについてそれぞれの思いや考えを話し合いました。ボンクが物足りなく感じていた色についても。

意見がまとまり、これから二人はフィレンツェへ向かいます。


トロンコとボンクが考えたペンケースは革職人のご夫婦が得意とする絞り技法を使ったペンケースです。

ペンケース自体はとてもシンプルですがちょっと面白いアイデアがいくつか組み込まれています。

4月の製品化を目指していますのでお楽しみに。

 

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オリジナルインクQuadrifoglio( 四葉のクローバー)

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トロンコとボンクが神戸のペンショップでインクの色について話し合っていると、周りにいた人たちが話に加わってとても盛り上がりました。

インクの色にはみんな興味を持っているようで、自分が今使っている万年筆をもっと楽しく使うことができそうなインクを探していることが分かります。

 

そんな人たちの中にフィレンツェから来た革職人の夫婦がいました。

二人はフィレンツェで師匠に付いて革の修行をして、ご主人は靴作りを、奥さんは絞り技法の革小物作りをマスターして、フィレンツェに工房を構えていました。

Quadrifoglio(クワドリフォリオ・四つ葉のクローバー)という名前の革の工房にトロンコとボンクはぜひ行ってみたいと思いました。

二人はとても明るくて、トロンコとボンクはすぐに好きになりました。

ぜひ、一緒に革製品作りをしてみたいと思いました。

 

 

ところで作りたいインクの色は決まっていましたが、インクの名前が決まっていません。

自然の中にある、誰が見ても良い感じを抱く葉っぱの色。

トロンコもボンクも革職人の夫婦と出会って、工房の名前を知った時からインクの名前は決まっていました。

この出会いをインクの色にすることによって、記念すべきものにもできるとも思いました。

 

幸運を呼ぶ四葉のクローバーのイタリア語の名前のインクなんてとても素敵です。

二人は勇気を出してインクにQuadrifoglioという名前を付けたいと2人に伝えました。

2人は快く承諾してくれて、自分たちの工房の名前がインクの名前になったことをとても喜んでくれました。

 

トロンコもこのご夫婦も自分の好きなことで生きていくために、自分の時間の全てをそれに使っている。

歌を歌ったり、ギターを弾いたり、カヌーに乗ったり、山に登ったりという趣味のある人の話を聞くといいなあと思うこともありますが、自分の時間の全てを仕事にまつわる時間とも言える生き方を自分が選んだのだからその中で楽しく生きていこうと思っていました。

 

トロンコが万年筆を使うのは書くことが楽しいからでした。

 

万年筆のインクの文字で埋め尽くされた自分のノートを見るのも楽しいし、万年筆のペン先のフィーリングを味わいながら書くのも楽しい。

万年筆を仕事で使うことが楽しいから、希少な万年筆を集めたりすることには興味はありませんでした。

 

自分が使うひとつひとつのものに何かまつわる自分なりの想いや理由があって、それらのものを大切にしながら使いたいと思う。

今回の出会いから生まれたインクはまさにそんな想いや理由のあるものです。多くの人に幸運のお守りにしていただけるインクになればいいなあと、トロンコは思っています。

 

 

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