2011年11月アーカイブ

書斎が欲しい

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ボンクの元に小包が届いた頃、トロンコは旅と旅の合間で家に帰っていました。

 

中央駅から電車やバスを乗り継いで何時間もかかるような不便な田舎町にその家はありましたが、トロンコはその町も家も気に入っていました。

 

家の床に寝転んで窓から見える空は、夜でも昼でもトロンコを懐かしいような、胸が少し痛くなるような想いにさせます。

 

こうやって何もせずにいる時、トロンコはボンクのことをよく考えます。

辛いことやハプニングがあった時、「ボンクならこんな時どうするのかな?」と思いました。

ボンクはなぜこんな自分の話に耳を傾けてくれるのか。トロンコの持っていないものをボンクはたくさん持っているように思っていました。

 

トロンコはとてもマイペースでのんびりとした性格なので、目端が利いて、いろんなことに気付くボンクのことをすごいと思っていました。また仕事でも成功していて、誰とでもすぐに仲良くなれて、色々な人を知っているところも尊敬していました。

 

でもそんなことはどうでもいいか、トロンコとボンクは楽しく旅をして、再会を誓い合った友達同士なのだからと思うのでした。

 

サンフランシスコのバーで、お酒の苦手なトロンコはとても甘い有名な子役の名前のついたカクテルを飲みながらボンクにポツリポツリと語った旅の目的や夢は心の中にあるけれど、日々の生活の中ではよく忘れていました。

 

気が付けば旅は惰性になっていて、感動することも少なくなっていたのです。

ボンクと語り合っているうち、トロンコは自分の旅の目的や、今の自分からするととてつもなく大きな夢を思い出したのでした。

 

夢は抱き続けて、人に語ることで実現することだということをトロンコは信じていました。そして今の自分から想像もできないことが来年になるとできるようになるのが成長することだと思っていたのに、何となく守りに入って知っている町だけを巡る無難な旅しか最近はしていなかったのです。

 

いつか夢が実現したらモンブラン149を手に入れたいとトロンコが言った時、ボンクはとても興味を持って聞いていました。

 

モンブラン149は最も旅が似合う万年筆だとトロンコはいつも思っていました。

他のどの万年筆よりも太くて大きい万年筆なのに、それがどうして旅が似合う万年筆なのか、トロンコにも上手く説明できませんが、ずっとそう思っていたのです。

 

でも、149を携えていない自分の旅はまだまだ続くだろう、でも149を手に入れた時自分の旅が終わってしまいそうで、それは少し怖いような気もしていました。

 

旅をこれからも続けることができるように、この住みやすいけれど少し殺風景な家に机を入れて書斎を作ろうと、トロンコは思いました。

仕事が思いっきりできて、好きな万年筆をいつまでも触っていられるような、家にいても世界中を旅できるような素敵な書斎。

 

書斎について、ボンクはどう思っているのだろう。

 

先日送ったダイアリーのカバーの地図になっている神戸の街でボンクと会って、机について話したい。

 

トロンコはボンクに手紙を出しました。

 

書斎が欲しい

 

 

 

心の扉

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街路樹の葉がレンガ色に染まり始めたある朝、ボンクの家に小包が届きました。  差出人はトロンコでした。

 

ボンクとトロンコの出会いは旅先の小さなバーでした。 
たまたま彼らがペリカンの同じ万年筆をシャツのポケットに差していたことがきっかけで会話が始まり、モノに対するコダワリ・考え方そして旅の目的が似ていたことで会話が弾み自然に意気投合しました。 
しばらくの間ボンクはトロンコと共に行動しトロンコに沢山のアドバイスをもらい、たくさんの夢を語り合い再会を約束しました。 

 

トロンコとは何年会っていないだろうか・・・ 

 

相変わらずベストを着ているのだろうか? 

 

まだペリカンの万年筆を使っているのだろうか? 

 

当時、「いつかはモンブランの149」と言っていたがもう149を使っているのだろうか? 

そして旅の目的でもある素敵なモノを見つけたのだろうか?素敵な人達に出会えたのだろうか? 

 

ボンクはトロンコとの出会いや旅、語り合った夢などを振り返りながら同時に夢を夢で終わらせてしまいそうな自分の力の無さに嫌気を感じていました。 
ボンクはここ何年か、一人でできることに限界を感じもがいていたのです。

そして旅にも出ていなかったのです。 

 

ボンクはトロンコからの小包を開けました。小包の中には正方形のリスシオというダイアリーと地図が印刷されたキャンバス地のダイアリーカバーが入っていました。 

 

ボンクはそれらを見た瞬間気付いたのです。 

旅に出ていないことに、出ようとしなかったことに、一人では何もできないことに、一人でしなくても良いことに、仲間がいることに。 

ボンクは数枚の着替えと数本の万年筆、ノート、カメラそしてトロンコにもらった大切な地図をボストンバッグに詰め込みました。 
ボンクは素敵なモノを見つけに行こうとしています、素敵な人達に出会いに行こうとしています。 

 

トロンコの地図がボンクの心の扉を開いたのです。

 

003.jpg 


 

トロンコの地図

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トロンコは地図が好きで、寝る前机に向かって地図を見ていると時間を忘れてしまいます。
地図はトロンコの想像力を刺激します。
この場所はどんな所だろう。どんな人が住んでいるのだろう。次旅に出た時はこの町に行ってみたい。
まだ行ったことのない国や町を地図で見ながらイメージするのです。
まだ行ったことのない町の地図でさえそんな調子なので、行ったことのある町の地図を見ると、旅の思い出が次々とよみがえり、とても楽しい気分になります。

 

トロンコは寝る前に小さな書斎机で、アウロラオプティマの万年筆でダイアリーにいろんなことを書き込みます。
アウロラの細字はダイアリーに小さな文字を書くのに向いているし、ペン先が柔らかくてとても書きやすいので、トロンコはダイアリーを書く夜の時間を一日の楽しみとしているのです。
いろんなことを書き込みながら、スケジュールを見たり、旅のイメージを膨らませます。

トロンコは家にいる時でも、毎夜机上で旅をしているのです。

 

お気に入りのダイアリーはリスシオダイアリーと言って、神戸という町にある会社とお店が自分たちが理想とするダイアリーを実現するために作った、万年筆で書くのがとても楽しいダイアリーです。

 

トロンコは旅の途中でそのダイアリーを見つけてからずっと、そのダイアリーを買うために神戸の町を訪ねることが恒例になっています。


自分の家に帰ってからトロンコはリスシオダイアリーにまつわる神戸の思い出に、神戸の町の地図、神戸がある日本の場所が世界のどのあたりにあるかすぐ分かる地図をこのダイアリーの表紙にしたいと思いました。

トロンコは早速町にある知り合いの仕立て屋さんを訪ねました。
仕立て屋さんは、そういうものなら丈夫なキャンバス地を使った方がいいと言ってくれて、ダイアリーのカバーを作ってくれました。

最初硬く感じられるキャンバス地も使っていくうちに柔らかく馴染んでくれて、使いやすくなっていくことも教えてくれました。


トロンコはコンバースのスニーカーを思い浮かべました。
それらは最初違和感があっても、何度も洗っていると足の一部になってくれます。
イメージ通りのカバーを手に入れてトロンコはとても嬉しくなりました。

 

これを友達で世界中を旅しているカメラマンのボンクに教えてあげたくなります。
トロンコは何か嬉しいことがあった時、良いモノに出会った時、ボンクに教えてあげたくなるのです。


ボンクは今どうしているのだろう。

 

 


やぎの仕立て屋 

旅の扉

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旅の扉では、WRITING LAB.のキャラクタートロンコとボンクの旅の暮らしを描きます。
二人は世界中を旅しながら、いろんなモノを使ったり、人に出会ったりします。
トロンコとボンク、二人の旅をお楽しみいただけますように。

 

 

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