書斎が欲しい

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ボンクの元に小包が届いた頃、トロンコは旅と旅の合間で家に帰っていました。

 

中央駅から電車やバスを乗り継いで何時間もかかるような不便な田舎町にその家はありましたが、トロンコはその町も家も気に入っていました。

 

家の床に寝転んで窓から見える空は、夜でも昼でもトロンコを懐かしいような、胸が少し痛くなるような想いにさせます。

 

こうやって何もせずにいる時、トロンコはボンクのことをよく考えます。

辛いことやハプニングがあった時、「ボンクならこんな時どうするのかな?」と思いました。

ボンクはなぜこんな自分の話に耳を傾けてくれるのか。トロンコの持っていないものをボンクはたくさん持っているように思っていました。

 

トロンコはとてもマイペースでのんびりとした性格なので、目端が利いて、いろんなことに気付くボンクのことをすごいと思っていました。また仕事でも成功していて、誰とでもすぐに仲良くなれて、色々な人を知っているところも尊敬していました。

 

でもそんなことはどうでもいいか、トロンコとボンクは楽しく旅をして、再会を誓い合った友達同士なのだからと思うのでした。

 

サンフランシスコのバーで、お酒の苦手なトロンコはとても甘い有名な子役の名前のついたカクテルを飲みながらボンクにポツリポツリと語った旅の目的や夢は心の中にあるけれど、日々の生活の中ではよく忘れていました。

 

気が付けば旅は惰性になっていて、感動することも少なくなっていたのです。

ボンクと語り合っているうち、トロンコは自分の旅の目的や、今の自分からするととてつもなく大きな夢を思い出したのでした。

 

夢は抱き続けて、人に語ることで実現することだということをトロンコは信じていました。そして今の自分から想像もできないことが来年になるとできるようになるのが成長することだと思っていたのに、何となく守りに入って知っている町だけを巡る無難な旅しか最近はしていなかったのです。

 

いつか夢が実現したらモンブラン149を手に入れたいとトロンコが言った時、ボンクはとても興味を持って聞いていました。

 

モンブラン149は最も旅が似合う万年筆だとトロンコはいつも思っていました。

他のどの万年筆よりも太くて大きい万年筆なのに、それがどうして旅が似合う万年筆なのか、トロンコにも上手く説明できませんが、ずっとそう思っていたのです。

 

でも、149を携えていない自分の旅はまだまだ続くだろう、でも149を手に入れた時自分の旅が終わってしまいそうで、それは少し怖いような気もしていました。

 

旅をこれからも続けることができるように、この住みやすいけれど少し殺風景な家に机を入れて書斎を作ろうと、トロンコは思いました。

仕事が思いっきりできて、好きな万年筆をいつまでも触っていられるような、家にいても世界中を旅できるような素敵な書斎。

 

書斎について、ボンクはどう思っているのだろう。

 

先日送ったダイアリーのカバーの地図になっている神戸の街でボンクと会って、机について話したい。

 

トロンコはボンクに手紙を出しました。

 

書斎が欲しい

 

 

 

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このページは、旅の扉 writing lab blog 管理人が2011年11月29日 12:00に書いたブログ記事です。

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