2011年12月アーカイブ

トロンコのメモ帳

| コメント(0) | トラックバック(0)

クリスマスの神戸の夜景はトロンコの目にも美しく映っていました。

景色は、特に夜景は寒ければ寒いほど美しく灯りがきらめきますが、今年の神戸はいつもより寒いのでこんなに美しいのだと、トロンコは思ったりしていました。

 

クリスマスと聞くと、子どもの頃住んでいた狭い家での家族との時間を思い出します。

お父さんもお母さんも妹もいて、小さなクリスマスツリーには赤と緑の電球が光っていました。

その光景を思い出すので、クリスマスツリーを見たり、クリスマスと聞いたりするとトロンコは温かい気持ちのなるのです。

 

子どもの頃六甲山頂から見た神戸の街の夜景は今でもトロンコははっきりと覚えています。

それほど高くも、かといって低くもない六甲山からは、神戸の街の東半分がちょうど良く見渡せます。キャンバス地のダイアリーのカバーのように地図が描けるくらいに見えるのです。

その頃は分からなかったけれど、大人になったトロンコはその街の風景のたくさんの灯りの中に、それぞれの家族の暮らしや人生があると思うと、胸が熱くなりました。

 

知らない街にこんなにたくさんの人が住んでいる。

世界中にはたくさんの同じような街があって、たくさんの自分たちと同じような家族がいると思うと、自分はこの世界において本当にちっぽけな存在だと思います。自分がこの世に生きたことを知らない人の方がはるかに多いと思うと、自分の利益ばかりを主張せず、周りの人を大切にして生きていきたいと謙虚な気持ちになるのでした。

 

ボンクときれいな夜景を見ながら、いつものようにボーッと子供の頃のことを思い出していましたが、心に浮かんだことや、見て感じたことをすぐにメモに書く習慣のあるトロンコは先日出来上がったばかりのメモ帳に、ペリカンの小さな万年筆M300でひと言ふた言、メモを書きました。

 

M300はシャツやベストの小さなポケットにも入るとても小さな万年筆ですが、吸入式になっているところがペリカンらしく、この万年筆を写真に撮ると、はるかに大きなM800と同じように見えるところもとても面白いと思っていました。

この万年筆のおもちゃっぽさをトロンコは気に入っていました。

 

トロンコがずっと使っていて、ボンクも気に入ってくれたメモ帳をモデルに作ったものは想像以上の出来栄えでした。

とてもシンプルなメモ帳のアイデアを70歳をすぎてもとてもパワフルな革屋さんと、ヤレ紙をカットして用意してくれた印刷屋さんの協力があって、トロンコのボロンチョなメモ帳がとても良いものになったのです。

 

今のメモ帳を使うまでトロンコは本当にたくさんのメモ帳を使ってきました。

メモ帳が好きで文房具屋さんでメモ帳を見るとすぐに買ってしまうということも理由ですが、紀行作家のトロンコはいろんなところに行って立ったまま何かを書くことが多く、メモ帳は必需品で理想のメモ帳をずっと探していたのです。

どんな文学や発明も多分わずかなメモ書きから始まったと思うと、メモを書くという行為にロマンを感じていて、大切にしたいと思っていました。

トロンコは何かを書く前に頭の中で書く物事についての切り口を探しますが、それに思い当たった時にすぐに書いておかないとそのアイデアはすぐに逃げてしまうのです。

 

そうやってたくさんのメモ帳を使ってみてもトロンコは理想のメモ帳を見つけられずにいました。

どんなメモ帳よりもチラシの裏や書き損じの原稿用紙の裏の方がメモが書きやすかったし、アイデアが広がっていくような気がしました。

それらの紙を葉書くらいの大きさに切って、穴を空けて表紙を付けて、ヒモで綴じただけのとても簡単なメモ帳がトロンコのメモ帳で、でも結局それが一番使いやすい。

トロンコは厚い本を買うととても得をしたような嬉しい気持ちになりますが、紙をたくさん綴じた裏紙のメモ用紙はそんな感覚に近く、メモ帳が厚ければ厚いほどいろんなことが書けるような気がしました。

 

ヤレ紙はチラシの裏や書き損じの原稿用紙の裏の替わりになりそうでした。

メモ帳に書いたものをダイアリーに清書したり、原稿用紙に書くためのネタとして使う。

メモは本当に全ての始まりなのだとトロンコは改めて思うのでした。

理想のメモ帳ができたので、今度はボンクが言っていた、机で使ったり、旅先の小さなテーブルでも使っている原稿用紙を束ねて入れておけるような革の封筒を、それもとても上質で触っているのが楽しくなるようなものを作りたいと思いました。

二人はペリカンM1000の3Bというマーカーのように太い線が書ける万年筆で原稿用紙を書くことが好きだったのです。

 

またボンクと二人で相談をはじめました。

 

もう大晦日、神戸の人たちは大都会の人たちと違ってそれほどセカセカと慌しくはしていないけれど、年の瀬の雰囲気は神戸の街にもありました。年が変わっても何も変わらないけれど、自分の気持ちの持ち方ひとつで素晴らしい年にできる。

 

トロンコはボンクとともに今までとは違う新しい年の予感を感じていました。

 

WRITING LAB. オリジナル サマーオイルメモノート 取扱店

*Pen and message.

https://www.p-n-m.net/contents/products/OG0057.html

*RIVER MAIL

 http://www.river-mail.com/product/859

 

 

 

トロンコのメモ帳.jpg 

秘密基地完成

| コメント(0) | トラックバック(0)

 

ハドソン河を挟んだ対岸、朝靄に包まれたマンハッタンを見ながら、ボンクはいつもオレンジのシャツを着ている木工家に作ってもらった「ラボデスク」で、頭の中に浮かんだアイデアをノートにまとめていました。

 

この机が届いてからボンクの朝は早く、5時には起床しベッドの横に置かれた机で新聞に目を通しながら朝食を食べ、食後のコーヒーを飲みながらこの机に合う自分たちが使いたいと思う机上用品を考えるのが日課になっていました。

 

良いアイデアが浮かぶと、ボンクはすぐに最近絵がとても上手くなったトロンコに電話してスケッチを描いてもらい、徐々に形にしていく共同作業が続きました。

この机で考えていると次から次へとアイデアが出てきます。
実用的なモノ、そうでないモノ、バカバカしいモノ、できるわけがないモノ・・・
次から次へとアイデアが出てくるボンクですが、行き詰まるときもあります。

 

そんな時はもう一つの「ライティングデスク(ボンクにとっては遊び机)」の方で何も考えずに気が済むまでひたすら遊びます。

この机は、天板をスライドしてひっくり返すことができ、その下には大きな収納スペースがあります。その収納スペースは誰も見つけることが出来ないボンクの宝箱になっていて、ボンクが選りすぐったモノたちの秘密基地になっています。


数ある中でも特に大切な万年筆やその他の筆記用具、腕時計、革小物、シルバーのアクセサリー、家族や大切な人の写真、手紙など。

 

さらに革のメンテナンス用品がぎっしり並べられ、何時間も万年筆の手入れや並び替え、インクの入れ替えをしたりします。時にはひたすら靴や鞄を磨いたり、何時間もカメラやレンズの手入れをしたり、腕時計を眺めたり、ただ机の向こうにに見えるマンハッタンを眺めたり。
家にいる時は大半の時間をこの机で過ごしていました。

 

トロンコはこの机をどんなふうに使っているのだろうか?どんなモノたちを入れているのだろうか?ボンクはとても気になっています。昔一緒に旅をしていた時に、トロンコの鞄の中に入っているモノや使っているモノが気になっていたように。

 

何かの作業をしたり、趣味を楽しんだりするだけではなく、色々なことを想像させてくれる机。まさにトロンコとボンクが思い描いていた理想とするモノそのままが形になったのです。

 

満足感を味わえ、人に伝えたいと思うモノ作りができた二人はたくさんのアイデアを出し合いました。

その中にボンクが前からとても気になっていて、ボンクも使いたいとずっと思っていたモノがありました。

それはトロンコが普段何気に使っているトロンコお手製のメモ帳でした。

 

新聞の折り込みチラシの裏の白紙を利用したメモ帳で、いらない紙を適当な大きさに切り上部にパンチ穴を開け、それを同じサイズにカットした切りっぱなしの革(使わなくなった革製品の再利用)で挟み、革ひもで綴じるというなんとも簡単な手作り感丸出しのメモ帳でしたが、トロンコが事あるごとに取り出して使っている姿が何故かかっこよく見えたのです。

 

トロンコと旅をしていた時に何十回もその姿を見ていましたが、何十回もかっこよかったのです。(もちろんかっこよいのはトロンコではなくメモ帳です)

 

二人はこの簡単な仕様のメモ帳を真剣に作ることにしました。

 

まずは紙選び。トロンコが以前神戸で見つけたダイアリーを作っている印刷会社の人に相談にのってもらうために、二人は再び神戸へ向かいました。
印刷会社の方との打ち合わせ場所は・・・そう、あの女店主のペンショップです。
女店主はすらっとしていて一見優しそうに見えますが、なぜかトロンコとボンクには厳しく二人は行く度にいつも怒られていました。なぜ怒られるのか二人には全く分からないのですが、たぶんお腹が空いているためだろうと二人は勝手に思っていました。それでも女店主は怒りながらも適格なアドバイスをしてくれるので、ペンショップは二人にとって居心地の良い場所でもありました。

そんな居心地の良い場所で印刷会社の人との打ち合わせが始まりました。

二人が作りたいモノを伝えたところ印刷会社の方はすぐにピッタリの紙を用意してくれました。

それはヤレ紙というもので、印刷する時に何らかのトラブルで製品に出来なくなってしまった紙のことだそうで、メモ用紙には十分でした。

しかもヤレ紙は、できるたびに色や紙質が変わる楽しみがあります。青い紙になったりピンクの紙になったり、二人は想像するだけでワクワクしました。

 

紙が決まり次はメインの革選びです。二人のモノ作りはモノ自体に「色っぽさ」を出すことをひとつのテーマにしており、二人は知り合いの革屋さんにとにかく色っぽい革を用意してほしいとお願いしていました。そして革屋さんが用意してくれた革は、二人が想像してた以上の革だったのです。

メモの台になる下側の厚みのある革は油分をふんだんに含んでいて独特の光沢を放ち、表紙に使う上側の革はいつまでも触っていたくなる柔らかく手触りの良い革でした。


トロンコとボンクはたくさんのアイデアの中のいくつかを、これらの素材を選んでくれた人たちと一緒にモノ作りをしたいと思い、しばらくの間神戸の街に滞在することにしました。

 

木について語り出すと止まらない木工作家が二人の理想を形にした机に続き、ヤレ紙を提案してくれた紙のプロと40数年いろいろな革を見続けてきた革のプロに助けてもらい、二人が本当に使いたいと思って作ったメモ帳が間もなく二人の元に届きます。
 
クリスマスはそこまでやって来ています。色とりどりの光で飾られた神戸の街。
トロンコの住むイギリスの田舎町のクリスマスはとてもきれいです。
ボンクの住む街ウエストニューヨークのクリスマスもとてもきれいです。
トロンコとボンクは今まで世界中を旅し、いろいろな街のクリスマスを見てきましたが、ボンクには今目の前に広がる神戸の街のクリスマスが世界中のどの街のクリスマスよりもきれいに映っていました。


トロンコにも同じ様に映っているのだろうか?

たぶんそんなことは考えていないだろうなと隣でとぼけた顔をしているトロンコを見てボンクは思ったのでした。

 

まぁ、いいっか・・・

 

打ち合わせ中.jpg

くるみの木から作った机

| コメント(0) | トラックバック(0)

 

トロンコの住む町から国際空港まで列車で数時間、そして飛行機で1日の半分をかけて日本に着きました。

 

飛行機に乗っている間中トロンコは原稿を書いていました。

小さなテーブルの上に原稿用紙を置いて万年筆を走らせます。

こういった原稿書きに一番良いのはペリカンM800のような大きな万年筆です。

長い時間乱暴に書いても平気な丈夫さがあるし、手が疲れない。

たくさん出るM800のインクを吸収の良い紙は受け止めてくれる。M800と原稿用紙は本当に相性がいいのです。

 

電車の中やカフェ、そして飛行機の中のような場所は意外と原稿書きに集中できるのです。

いつも外で仕事をしているトロンコでも、家に帰った時ホッとできる空間。そこで思いっきり仕事したり、趣味を楽しむことができる場所は必要だったし、めったにいない家での時間をより充実して過ごしたいと思っていました。

机を作りたいと以前にも思ったことがありましたが、自分にそんなことができるはずがないと思って、その考えを実行せずに心の隅に仕舞い込んでいました。

でも今なら作ることができると思いました。

 

旅の途中でボンクという友達と出会ってから、できないことなんて何もないと思うようになっていました。

昨年できないと思ったことが今年はできるといつも思えるような生き方をしたいと、ボンクを見ながら思ったのでした。

ボンクと机について話し合うための場所として神戸を選んだのは、あるペンショップの存在がありました。

 

神戸に来るといつも立ち寄るペンショップがあって、ボンクもそのペンショップを訪ねたことがあると言っていましたので、そのお店で待ち合わせることにしたのでした。

ペンショップには女店主がいて、その人から二人は子供のように扱われてしまいますが、いつも会いたくなる。でもその話はまた今度。

 

その店に来るお客様も、書くことやその周りのことにこだわりを持っている人たちばかりなので、ぜひその人たちに机の話を聞きたいと思いました。

 

ペンショップで久し振りに再会した二人は、すぐに机の話を始めました。

その机に向かうとクリエイティブな気持ちになれる、趣味を楽しみことができる机についての二人の議論に周りにいたペンショップのお客様も巻き込まれました。

様々なアイデアが出て、二人はその人たちの机や書斎の話を聞いてみました。

そして二人はたくさんの書斎の平面図とアイデアを手に入れました。

机のアイデア集めに皆さんが協力してくれたことに二人はとても感謝しましたし、自分たちが作りたい机のイメージがかなりまとまってきました。

 

二人の机に関する夢のような話は尽きることがなく、いつまでも楽しそうに話していました。

そんな二人の様子を見ていた女店主がしびれを切らして「夢ばかり言い合っていないで、この木工家を訪ねてみなさい。」と、ある木工家の連絡先を教えてくれました。

 

二人が訪ねた木工家は女店主が親しくしている友達でしたが、それだけでは簡単に机を作ってくれそうにはありませんでした。

自分たちの本気の気持ちを木工家に理解してもらいたいという一心で、机を作りたいということを一生懸命に話しました。

「ちょうど胡桃が生らなくなったくるみの木を切るんだ。」

木工家は二人の熱意に根負けするように、急に穏やかな表情になって切り出しました。

山にとても大きなウォールナットがあって、ある年から実が生らなくなったので切り倒すことになったというのです。

山は放っておくとどんどん荒れていってしまうので、山に住む人はそうやって山を健康な状態に保っているのです。

 

ウォールナットは安定していて、狂いも少ないので家具に最も適した素材のひとつです。

1本の木からひとつの家具の全てを作るのが木工家の美学であり、その家具を最も美しく、歪みなく長持ちさせる工夫でもあるのです。

「あの大きさなら、二人の机を両方とも作ることができる。」

木工家は二人の言う仕事や趣味に打ち込むことができる、家での時間をより上質なものにしてくれる机の製作に取り掛かってくれることになりました。

 

季節が変わって3ヵ月後、トロンコの家に机が届きました。

 

この3ヶ月間木工家から机の製作過程や提案を伝える手紙が何通も届いていて、木工家が自分のアイデアを盛り込みながら、いかに熱心に机を作ってくれていたかが、その文面から伝わってきました。

 

木工家は実直で自分の仕事に厳しい人なので、その人に机を作ってもらうことができて本当に良かったと思っていましたので、机が届くのを楽しみにしていました。

木について語り出すと止らない木工家を見て、トロンコは自分も仕事にもっとのめりこみたいと思いましたし、木の良さを伝えるために日常の生活の中で使えるものを良い材料で作るという木工家の考え方に大いに感銘を受けていました。

木工家はその仕事でいくらお金が儲かるといったことにとても疎く、無頓着でした。

いつもオレンジのシャツを着ていましたが、その顔はいつも幸せそうで、みんなから感謝されていました。

木工家は「木に正直でないといけない」と言っていました。

目の前にある木が最も良く、美しい形にするのが木への誠意であり、変に繕ったり、嘘をいわないことがお客様への正直さで、それを信念としていました。

でも木工家は、自分が木工という仕事で長く生きていくためにはそれが一番大切なことなのだと知っていたのです。

 

机は本当に、素晴らしいものでした。全ての部品が同じ木からできているため色も統一されていて、木目の感じに全く不自然さがない。

そして同じ木から生まれているので、全ての部分が同じようにエージングしてもっと風格を湛えるのだろうと予想できました。

机を置きたい場所のサイズを伝えていましたので、ピッタリと置くことができました。

仕事机と遊び机の2つの部分に分かれていて、仕事机は作業がしやすいようにシンプルな平机を心がけて作られていました。

天板から見るとシンプルな姿ですが、コンピューターのコードを通す穴が設けられていて、天板の下にはアダプターを収納するスペースや棚が設えてあり、細やかな気配りで作られていることが分かりました。

 

遊び机は圧巻でした。

木の無垢だと思った天板はひっくり返り上質な革を貼った天板に変身する仕掛けになっていました。

大切な趣味のものを柔らかい革の上で扱いたいと思う人は多いと思います。

トロンコもたくさんある、趣味と仕事の道具である万年筆をこの革の上で触っていたいと思いました。

それにしてもその想いを叶えるためにこんな大掛かりな仕掛けを作るなんて。木工家の遊び心には驚きました。

 

ひっくり返り天板の下、大きな収納スペースになっていました。

大切な万年筆を秘密基地のように隠しておける場所が欲しいと伝えましたが、木工家は万年筆が本当にたくさん入るスペースをこの天板の下に用意してくれていたのです。

机には手紙が添えられていました。「この机がもっと楽しくなる机上用品をこれから作るから、お楽しみに」。

木工家の満面の笑顔が思い出されました。

 

きっとボンクの元にも机は届いただろうな。

 

 

 

くるみの木の下で.jpg 

 

 

神戸へ

| コメント(0) | トラックバック(0)

トロンコから地図が届いた次の日からボンクは旅に出ていました。行先は決めずただひたすら北へ。

寒い季節にはさらに寒いところへ、暑い季節にはさらに暑いところへ。

寒い季節と暑い季節では服装も違えば食べるものも違ってくる。街の雰囲気や匂い、

空の色、海の色、山の色、流れる音楽・・・自分の気持ちも。

それらを徹底的に味わう、これがボンクの旅のコダワリ、楽しみ方なのです。

 

一週間ほどの旅でいろいろな人に出会ったり、良いモノを見たりそれなりに旅を楽しんだボンクでしたが、何か物足りずウエストニューヨークのアパートへ帰ってきました。

物足りない原因はトロンコが送ってくれた地図が印刷されたダイアリーカバーでした。

 

こだわって作られた良いモノはたくさんあり、今まではそれらを求めて満足してきたボンクでしたが、トロンコが作ったダイアリーカバーを見てから、作られたモノを求め使うより自分なりにこだわったモノを作って使いたいと思うようになりました。

 

そんな時にトロンコから一通の手紙が届きました。

手紙には「家にいても世界中を旅できるような書斎を作ろうと思っている、一緒に考えないか?」と書かれていました。

 

考える間もなくボンクの頭のなかに飛び込んできたのは「秘密基地」でした。

 

小さい頃誰もがあこがれた秘密基地、ボンクの秘密基地は家の中の小さなクローゼットの奥でした。吊るしてある母親の服をかき分け奥まで入ると子供が2人入れる何も置いていないスペースがあり、そこに大切なモノやお菓子などを持ち込み母親に見つからないよう自分だけの時間を過ごすのです。

 

ボンクは子供の頃の記憶が蘇ってきたのと同時に、大人になって忘れていた純粋にワクワクする気持ちを思い出しました。

 

このワクワク感をトロンコと一緒に味わいたい。そして他の大人たちにも味わってもらいたい。大人が真剣に遊べるものを作っていきたいと思いました。

 

ボンクはいろいろなことを教えてくれたトロンコを尊敬しています。

勢いで行動するボンクとは違い、少し天然なところはあるけれどドッシリと構え、一見堅そうに見えるが実はとても柔らかい考えをもっている。

そんなトロンコにボンクはいろいろな面で影響を受けていました。

 

いつも旅の準備は楽しいものです。どんな服を着ていこうか、どんな靴を履いていこうか、どんなものを持っていこうか・・・、トロンコに会うのもとても楽しみです。

しかし今回はいつもと違いました、楽しさの中に緊張感がありました。

トロンコの真剣さが手紙でも伝わってきたのです。ボンクはトロンコと会うのに失礼の無いものを選びました。ボンクもトロンコに真剣さを伝えたかったのです。

 

靴は磨き込んだ内羽根のストレートチップを、腕時計は革ベルトの小振りの3針を、万年筆はアウロラ88、ペリカン ホワイトゴールド、ペリカン M10003本を選び地図のダイアリーカバーといっしょに鞄に詰めこみました。

 

神戸はどんな街なのだろうか?どんな机が作れるのだろうか?これから何が始まるのだろうか?

 

ボンクはいろいろなことを考えながらクリスマス色に染められたウエストニューヨークを後にしました。

 

 

 
神戸へ

このアーカイブについて

このページには、2011年12月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2011年11月です。

次のアーカイブは2012年1月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。