インクの色

| コメント(0) | トラックバック(0)

万年筆は好きなインクの色を入れて楽しむことができるものなのに、トロンコは

ブルーブラックばかりを使っていました。

 

トロンコの住む町の本屋さん兼文房具屋さんにペリカンとパーカーの黒とブルー

ブラックしか置いていないこともその理由ですが、一番大きな理由はトロンコが

万年筆のインクの色を楽しむことができないというところでしょうか。

 

たまに都会に行った時に、大きな文房具屋さんで喜んでそのお店のオリジナル

インクや、日頃目にしないメーカーのインクなどを買って使ってみたりしたことが

ありますが、しばらく使っただけですぐに飽きて使わないままになっていました。

 

いろんな色のインクを使ってみてトロンコが思ったことは、インクの色は自分の血の

色だということでした。もう少し分かりやすく言うと、インクの色は自分の心の色で、

どんな簡単なメモ書きでも自分らしくない色は使いたくないと思っているのです。

 

だからボンクが自分たちだけの色のインクを作ろうと言い出したとき、新しい色を

自分が使いたいと思うか少し心配でした。

そんなところでトロンコは保守的だったのです。

 

トロンコの町に住む人たちはさらに保守的で、何においても冒険しない。自分たち

ずっと守ってきた暮らしのペースを続けることだけを考えて、実際そのように

暮らしていました。

そんな風に暮らしていけたらそれはそれでとても素敵なことだと思います。

でも周りの状況は少しずつ変わり始めていて、世の中の大きな動きはトロンコが

住む町にも影響を及ぼしていて、今までの暮らしを守ることが難しくなっています。

 

何十年も変わっていなかった町の風景は、人の流れとともに変わり始めています。

静かに、でも大きく揺れる世の中を思いながら、トロンコは物作りやインクの色に

ついて考えました。

世の中が変わっても変わらない価値を持つものを作りたいと改めて思いました。

 

 

トロンコが作りたいインクの色は既に決まっていましたが、ボンクがどう思っているか

分からないので、会って話し合いたいと思いました。

 

トロンコとボンクは、神戸の女将さんのペンショップでインクの色について話し合い

ました。女将さんは相変わらずで二人を子供のように扱います。

でもインクの色について二人が話している時は、色々親身になって一緒に考えて

くれました。

 

ボンクもトロンコと同じように、いつまでも失われない新鮮さを表しながら、落ち着

た色。原稿書きにも手帳にも、日記帳にも使いたくなる色としてグリーンのインク

作りたいと思っていました。

グリーンは二人が好きな金のキャップの万年筆とも合うし、二人の友情を表すと

したらグリーンではないかと意見が一致したのです。

 グリーンは二人の心の色でした。

 

インクの色が決まったので、二人は瀬戸内海に面したのどかな田舎町にある

インク研究所を訪れました。

目の前に小さな島々が浮かぶ穏やかな海。後ろにはあまり高くない山々がありま

す。天狗がその上に立って、人間たちを見下ろしていたという伝説のあるテングン

ジョウという岩も見える。

インク研究所の博士は二人が作りたいインクの話を聞いてくれました。

 

科学者なのに、その色から連想される情景や名前を聞いて色を作り出すことを

得意としていて、一通り二人の話を聞くと、インクを作って送ると約束してくれました。

 

どんな感じのインクになるか、出来上がる日が早くも待ち遠しく思いながら、二人

単線のローカル線に乗り込みました。

 

そして、このグリーンのインクには"クワドリフォリオ"という名前をつけることになり

ました。幸運を呼ぶお守り、「四葉のクローバー」という意味のイタリア語で、この

インクにピッタリの名前だと思いますが、なぜその名前がついたのかまた今度。

 

 

*WRITING LAB.オリジナルインク 「クワドリフォリオ」は現在製作中です。

入荷次第ご案内させていただきます。(2月28日時点) 

 

 

インクの色.jpg

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://writinglab.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/19

コメントする

このブログ記事について

このページは、旅の扉 writing lab blog 管理人が2012年2月28日 11:31に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「革封筒を作りたかったもう一つの理由」です。

次のブログ記事は「「世界観」」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。