2012年7月アーカイブ

ミュージシャンの後ろ姿

| コメント(0) | トラックバック(0)

ある事情でボンクはしばらくの間ニューヨークを離れることができませんでした。仕事もほとんど手につかず何もできない自分にイライラしながら毎日を過ごしていました。あまりというかほとんど後ろを振り返ることがないボンクですが、この間はいろいろな後悔がボンクの頭の中をぐるぐる回っていました。

そんな中たくさんの人達がボンクを支えてくれました。

 

ある日、ボンクとよく一緒に仕事をしてくれているミュージシャンから電話がありました。

少年院の慰問の仕事が入ったので気分転換になるかもしれないから一緒に行かないかというのです。

彼はテレビやライブの時だけでなく家族や友人の前でも決して弱音をはかず、いつも前だけを向いて歌い続けていますが、いろいろな問題を抱えていることをボンクは知っています。

 

あまり気が乗らなかったボンクでしたが近場ということもあり撮影の準備をし、一緒に向かいました。

リハーサル中、彼はたいていリラックスして歌っています。周りにいるスタッフもリラックスさせているのです。そんな雰囲気のリハーサルの間にボンクも構図や光の量などを確認しながらテスト撮影を繰り返し本番に臨みます。

いつもリハーサルにあまり時間をかけない彼ですが、この日は違いました。何度も何度も音を確認し、いつものリラックスした雰囲気はなくピリピリとした表情がレンズ越しに見えます。

 

彼が思う良い音がなかなか出ないのです。シャッターを切る音、呼吸でさえも気をつかいます。

音響設備がしっかりしているところでもなければ、いろいろな制約があるため大掛かりな機材を持ち込めるところでもありません。

その中で必死に良い音を探している彼に声をかけられる者はいませんでした。

監視する教官達が何人もいる堅い雰囲気で始まったライブを彼は曲と曲との間に柔らかいMCを挟みながら徐々に空気感を変えていきます。

曲が進むにつれ子供達に笑顔が出てきました。知っている歌を口ずさむ子も出てきました。突然ある一人の子が手拍子をしだしました。

周りにいる子達にも広がっていきます、最後は教官達にも広がり会場は一つになりました。なぜこの子達はここにいるのかなど関係なく、とても感動的な場面を見せてもらいました。

 

あの場所で最初に手拍子をすることはとても勇気がいることだと思います。しかし一人の子の勇気がなければ感動も生まれなかったと思います。勇気を出させ感動を起こす、普段めったにピリピリすることのない彼がなぜそうなったのかを理解できた気がしました。

 

彼は時に何千人と集めるプロのミュージシャンですが、あるときボンクにポツリと言ったことをボンクは時々は思い出します。

「たとえ会場に誰一人お客さんが入ってなくても最後までステージに立って思いっ切り歌う。スタッフでもいい、聞いてくれる人が一人でもいるなら」と。

もしそんな日が来るのならボンクはその場にいたいと思っています。

トロンコとのもの作りも一人でも共感してくれる人がいる限り続けていければと・・・

 

あっ、トロンコのことを忘れてました。

トロンコも当然ボンクを支えてくれた一人で、ボンクが何も考えられない、何もできない間いろいろなことを考え、行動してくれました。

トロンコはあまり感情を表に出しません、あえて言葉にもしません。

ボンクはわかっています。冷めているのでもなく言葉足らずでもないのです、トロンコなりの優しさなのです。

たぶん、きっと・・

 

 

ミュージシャンの後姿.jpg 

夏に想うこと

| コメント(0) | トラックバック(0)

夏は過去にいた人たちを想う季節だとトロンコは思っています。

おじいさんやおばあさん、伯父さん、伯母さん、お母さん、友達など、自分より先に死んでしまった人のことを思い出します。

それは義務感や何かの影響などではなく、魂がそう思わせているように感じます。

亡くなった人たちについて思い出すのと同時に、夏にはなぜか自分が見たはずもない、それほど昔のことではない戦争のことや、それで亡くなった人たちのことを想うのです。

トロンコはフランス沿岸部の戦場となった街を見て回り、ドーバー海峡を渡り空襲のあったイギリスの町も訪ねようと思いました。

フランス沿岸部にあるカレーの町を小高い丘から長い時間見ているうちに当時の光景が見えるような気がするのは、街にまだ情念のようなものが残っているからなのかもしれません。

 

そうやって夏に起こった出来事について、トロンコが考えながらメモノートにそのことを書きつけていると、ニューヨークにいるボンクから電話がありました。

ビーチでメモノートを使おうとしたら、あまり使う気がしなかった、何とかならないか?と言います。

黒は夏の色ではないとボンクは言う。確かにその通りだとトロンコも思いました。

まさかビーチ用の蛍光色のメモノートを作るわけにはいかないし・・・。トロンコの夏の、海のイメージの色とは蛍光色だったのです。

トロンコが若い時、泳ぎに持っていくものは何もかも蛍光色だったことを思い出しました。

トロンコは、ビーチで美女を2人ほどはべらせてくつろいでいるボンクを思い描きました。

いつも楽しそうにしているけれど、実は深い事情があってニューヨークを離れることができないボンク。

普通ではないスペシャルなメモノートをトロンコも作りたいと思いました。

美女をはべらせているボンクにも似合うメモノートを。

 

トロンコはフィレンツェのクアドリフォリオご夫妻の工房をまた訪ねました。

丘を駆け下り、フィレンツェに向かう飛行機に飛び乗りました。

クアドリフォリオのご夫妻はいつもトロンコを笑顔で温かく迎えてくれます。

まだ出会ってそれほど日が経っていないのに、こだわりなく話しかけてくれる二人をトロンコはとても嬉しく思っていました。

世代が違ったり、立場が違うとどうしても構えたり、装ったりしてしまいます。

でもそういうことは何の意味もなくて、人に対する時はありのままの自分でいるべきで、それによって相手もこだわりをなくしてくれるということを二人と出会って、改めて思いました。

 

クアドリフォリオの工房には、実は普通の牛革以外にたくさんの変わった革があります。

特に爬虫類の革は、ご主人がオーダー靴のワンポイントで使うことが多いからストックしているものですが、実は相当に爬虫類系の革が好きなのではないかと思っています。

そんな特別な革を見ながら、トロンコは自分の好みに合いそうなもの、ボンクの好みに合いそうなものを選びました。

ボンクのように多くの人のリーダーシップをとって多くの人と一緒に仕事をするような人が使えそうなイメージの、特別なメモノートになりそうな革を選ぶことができたと思いました。

 

古い時代の建物が並ぶフィレンツェの街外れにあるクアドリフォリオの工房をトロンコは出ました。

まだたくさんの人が楽しそうにブラブラと歩いています。

フィレンツェに来るまで、戦場となった町を巡っていましたので、重苦しい気持ちになっていましたが、

二人と会ったことで、とても明るい気持ちになりました。

トロンコは清々しい良い気分に浸りながら街を歩いていきました。

 

 

夏に想うこと.jpg

特別なサマーオイルメモノート

| コメント(0) | トラックバック(0)

 休みがあまりとれないボンクにとって、たまの休日はのんびりできる大変貴重な時間です。そんなこれからの時期、ボンクは休みの度に海へ出かけます。目的は特にありません。

トートバッグにカメラ、読みかけの文庫本、サマーオイルメモノートに万年筆、そしてペットボトルのコーラ(ニューヨークのビーチではアルコールが禁じられているので)、これだけあれば1日過ごせます。

 

今回の目的地はボンクが住むウエストニューヨークのアパートから車で1時間強の、砂浜が延々と続くジョーンズビーチ。

ボンクはここのボードウォークから見る砂浜と海がとても好きで、一人で来るときは、持ってきた折り畳みの椅子に座り、コーラを飲みながら本を読んだり、原稿のネタを書き留めたり、眠くなれば昼寝をしたりしています。

 

ボンクはいつものようにメモをしようと鞄から黒の革表紙のサマーオイルメモノートを取り出したのですが、なぜか気分がのりませんでした。

何故なのか色々考えてみると、真っ青な空の下で白い砂浜や青い海を見ながら書くメモノートの表紙が黒だったからなのだと思いました。

ささいなことですが、何か思考の邪魔をされているような気分になります。

以前からボンクは季節やその日の気分、服装で表紙を替えれたらと思っていました。きっとその方がメモノートの楽しさも増すはずです。

 

そこでボンクは、その場ですぐにフランスを旅しているトロンコに電話をしました。

 

ボンクはリザードやワニを使った表紙を作りたいとトロンコに伝えました。色も素材感もTPOに合わせて表紙を付け替えて使うのだ、ということも。

するとトロンコも同じように思っていたらしく、話はとても盛り上がりました。トロンコはすぐにイタリアにいるクアドリフォリオの二人の工房へ戻って選んでくると言ってくれました。

 

ボンクの希望通りの革はあるのでしょうか?

またトロンコのメモノートはどんな仕様になるのでしょうか?

 

ボンクは自分のメモノートよりトロンコのメモノートの方が楽しみです。

 

 

特別なサマーオイル.jpg

トロンコパリのオープンカフェで

| コメント(0) | トラックバック(0)

トロンコはパリを訪れていました。

島国からフランスまでは海峡をひとまたぎ。本当にあっという間についてしまいます。

でもトロンコはフランスを、このパリを訪れたことがありませんでした。

トロンコにとってパリはあまりにもお洒落すぎるし、誰もがかっこ良すぎると思っていました。

そしてあまりに都会すぎる。

でも心境の変化もあって、パリを訪れてみました。

ヨーロッパの大都会の街中独特の細い路地を歩き回りました。

パン屋、雑貨屋、レストラン、あるいは万年筆の専門店など、パリにあるお店はどれもとてもお洒落でそれぞれが世界観を持っている。

どの店も誰の真似もしてない、自分たちが今まで生きてきた経験や美学を表現した素晴らしいお店ばかりでした。

それらのお店はお店の人が仕事を楽しんでいることが伝わってきて、こちらも楽しい気分になります。

街中を歩き回って、セーヌ川岸にある古書の露店街をはしごした後、カルティエ・ラタンのカフェのオープン席でお茶を飲みながら仕事をしようと思いました。

数冊の古書の収穫で重くなった鞄を置いて、カフェのオープン席で一息つきました。

7月のパリは暑い。それでもカフェのオープン席は観光客や地元の常連さんでいっぱいです。

トロンコはまわりにいる人たちを観察しながら仕事を始めました。

一人で本を読む人。数人でおしゃべりする人。

その中でトロンコはある男性が気になりました。

その男性はものすごい集中力で他人を寄せ付けないオーラを出しながら、黒いノートに鉛筆で書き物をしていました。

 

「同業者かな?」

 

同じ仕事をしている人同士は直感で分かりますが、その人は誰が見ても物を書いて生活している人だと思いました。

とても大柄でがっしりした体格で、たぶんアメリカ人だろう。

先ほどギャルソンたちと親しげに話していましたので、常連だと思いました。

優しいタフガイといった感じの顔つき。

どこかで見たことがある人だと思いましたが、トロンコは忘れて自分の文章の中にのめり込んでいきました。

ある程度の目標まで書くことができて、体を伸ばした時にそのタフガイも顔を上げてトロンコの万年筆とテーブルに置いていた持ち物をとても良いねと褒めてくれました。

 

トロンコはその時ボンクと作ったステーショナリーたち、サマーオイルのメモノート、原稿用紙やノートを入れる革封筒、ペンケースSOLO、地図柄のキャパス地のダイアリーカバーなどをテーブルの上に広げていたのでした。

トロンコは新しくできたばかりのメモノートの原稿用紙罫の紙を見せました。

どんどん書き千切っていくメモ用紙に原稿用紙の罫線が入っているのは、不思議な感じがするかもしれませんが、このメモ帳で文章を作るトロンコにとって、ある程度文字数が把握できる原稿用紙罫はぜひ作りたいと思っていたものでした。

少しずつ手を加えて、より良い、面白いものにしていく。

新しいものを作るのも楽しい作業ですが、こだわりを込めてモノを熟成していくのも終わりのない楽しい作業なのです。

アルファベットを書くタフガイにとって、原稿用紙は不要ですが、書く気分を盛り上げてくれる模様の入ったメモ帳として面白いと思ってくれたようでした。

「きみたちのステーショナリーと同じように、文章を簡潔に、でも上質なものを書くように私も心掛けている」とタフガイは言いました。

 

きっと世界中を旅しているそのタフガイもトロンコとボンクに近い感性を持っていると思いました。

タフガイが席を立った時、教会の鐘が鳴りました。「あの鐘は誰のためになるのだろう」とトロンコに言いながら彼は路地に消えて行きました。

 

 

*WRITING LAB. サマーオイルメモノート用替紙「原稿用紙罫」は、近日発売予定です。

 

パリのオープンカフェで.jpg

SOLOに入れる万年筆選び

| コメント(0) | トラックバック(0)

トロンコと訪れたクアドリフォリオの工房はとても充実した時間でした。

クアドリフォリオの二人はトロンコとボンクの「もの作り」を真剣に考えてくれましたし、何よりトロンコとボンクが心底楽しみながら取り組めたのです。

 

そんな中、何回も改良を重ねて出来上がった1本差しペンケース「SOLO」。

このペンケースを使ってくれる人達はこれに入れるための1本のペンをどのように選ぶのか?ボンクはそこがとても気になっていました。

 

外出時、ボンクはジャケットのポケットにも入る薄手の3本差しのペンケースをよく使っていました。極力荷物を少なく、軽くしたいボンクは何本ものペンを持ち運ぶのが好きではありません。

ボンクはその3本差しのペンケースにその日の気分で2本のペンを選んでいます。

1本目は手帳に使うしっかりとしたペン先の細字、2本目はメモや原稿が気持ちよく書ける軟らかいペン先の太字、3つ目のスペースにはお気に入りの香水を入れたアトマイザーを入れて持ち歩いています。

外出時、「SOLO」に入れて1本だけ持って行くとしたらどんなペンを入れるのか?

極力荷物を少なくしたいボンクでも1本に絞るとなるとかなり悩んでしまいます。

そもそも1本差しのペンケースを使うという考えがボンクにはありませんでした。

だから最初は1本差しを作るというトロンコの考えもよく分かりませんでした。

でも企画を進めていくにつれ、一番好きな1本は何なのか?絶対失くしたくない1本は何なのか?ボンクは自分にとって本当に大切な1本は何なのか?を考えるようになりました。

 

たくさんの思いがつまった本当に大切な1本をSOLOに入れることが出来れば、もっともっと素敵なペンケースになる、この1本差しペンケースはそんな使い方をしてもらいたいと思いました。

ペンだけではありません。複数所有している腕時計や靴、鞄も同じように考えました。

もちろんそれぞれにはそれぞれの用途があり一概には言えませんが、消耗品以外のたいていのものは一つあれば事足りるのではないか?

ボンクにとって今回は本当に大切なものは何かを考えさせられたもの作りでした。

 

本当に気に入って大切なものに出会うためには、色々なものを見なくてはならず、当然時間も掛かります。でも意外とすぐに見つかるかもしれません。

 

ものと人は違いますし叱られるかもしれませんが、大切なパートナーとめぐりあうのと同じように、これ以上に大切なものはないという一つが見つかれば、それはとても素敵なことだとボンクは思いました。

 

トロンコは「SOLO」に入れる1本のペンをどのように選ぶのでしょうか?また、トロンコの大切な1本は何なのか?じっくり聞いてみたいとボンクは思っています。

トロンコだけでなく「SOLO」を使って頂いている方々にも。

 

 

 

シガーケース型1本差しペンケースSOLO 取扱店

 

〇Pen and message. 

https://www.p-n-m.net/contents/products/WL0007.html

 

 

SOLOに入れる万年筆選び.jpg

このアーカイブについて

このページには、2012年7月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2012年6月です。

次のアーカイブは2012年8月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。