ミュージシャンの後ろ姿

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ある事情でボンクはしばらくの間ニューヨークを離れることができませんでした。仕事もほとんど手につかず何もできない自分にイライラしながら毎日を過ごしていました。あまりというかほとんど後ろを振り返ることがないボンクですが、この間はいろいろな後悔がボンクの頭の中をぐるぐる回っていました。

そんな中たくさんの人達がボンクを支えてくれました。

 

ある日、ボンクとよく一緒に仕事をしてくれているミュージシャンから電話がありました。

少年院の慰問の仕事が入ったので気分転換になるかもしれないから一緒に行かないかというのです。

彼はテレビやライブの時だけでなく家族や友人の前でも決して弱音をはかず、いつも前だけを向いて歌い続けていますが、いろいろな問題を抱えていることをボンクは知っています。

 

あまり気が乗らなかったボンクでしたが近場ということもあり撮影の準備をし、一緒に向かいました。

リハーサル中、彼はたいていリラックスして歌っています。周りにいるスタッフもリラックスさせているのです。そんな雰囲気のリハーサルの間にボンクも構図や光の量などを確認しながらテスト撮影を繰り返し本番に臨みます。

いつもリハーサルにあまり時間をかけない彼ですが、この日は違いました。何度も何度も音を確認し、いつものリラックスした雰囲気はなくピリピリとした表情がレンズ越しに見えます。

 

彼が思う良い音がなかなか出ないのです。シャッターを切る音、呼吸でさえも気をつかいます。

音響設備がしっかりしているところでもなければ、いろいろな制約があるため大掛かりな機材を持ち込めるところでもありません。

その中で必死に良い音を探している彼に声をかけられる者はいませんでした。

監視する教官達が何人もいる堅い雰囲気で始まったライブを彼は曲と曲との間に柔らかいMCを挟みながら徐々に空気感を変えていきます。

曲が進むにつれ子供達に笑顔が出てきました。知っている歌を口ずさむ子も出てきました。突然ある一人の子が手拍子をしだしました。

周りにいる子達にも広がっていきます、最後は教官達にも広がり会場は一つになりました。なぜこの子達はここにいるのかなど関係なく、とても感動的な場面を見せてもらいました。

 

あの場所で最初に手拍子をすることはとても勇気がいることだと思います。しかし一人の子の勇気がなければ感動も生まれなかったと思います。勇気を出させ感動を起こす、普段めったにピリピリすることのない彼がなぜそうなったのかを理解できた気がしました。

 

彼は時に何千人と集めるプロのミュージシャンですが、あるときボンクにポツリと言ったことをボンクは時々は思い出します。

「たとえ会場に誰一人お客さんが入ってなくても最後までステージに立って思いっ切り歌う。スタッフでもいい、聞いてくれる人が一人でもいるなら」と。

もしそんな日が来るのならボンクはその場にいたいと思っています。

トロンコとのもの作りも一人でも共感してくれる人がいる限り続けていければと・・・

 

あっ、トロンコのことを忘れてました。

トロンコも当然ボンクを支えてくれた一人で、ボンクが何も考えられない、何もできない間いろいろなことを考え、行動してくれました。

トロンコはあまり感情を表に出しません、あえて言葉にもしません。

ボンクはわかっています。冷めているのでもなく言葉足らずでもないのです、トロンコなりの優しさなのです。

たぶん、きっと・・

 

 

ミュージシャンの後姿.jpg 

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このページは、旅の扉 writing lab blog 管理人が2012年7月31日 18:06に書いたブログ記事です。

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