ふくらんだ日記帳

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自分の仕事が好きで、いつも仕事のことについて考えている人は文房具が好きな人が多いとトロンコは思っています。

もちろんトロンコ自身がそうですし、ボンクや木工家などの周りにいる人たちも自分の仕事を良くしたいと思っているので、仕事の血液となる本と同じように、文房具について考えています。

 

本が仕事に必要な知識や考え方を得られるものだとすると、文房具は仕事をより楽しくしてくれるものだと思い、行った先々で文房具店を見つけるとつい入って、自分の仕事において改善したいと思っていることの助けとなるものを探しています。

 

いつも行く港町のバーには、トロンコと同じように文房具好きな人が集まります。

大学の先生、作家、俳優、音楽家、経営者、会社員、仕事は様々ですが、皆文房具へのこだわりは相当なもの。

トロンコは、そのバーに行くときは夜遅くまで議論が白熱して帰りが遅くなってもいいように、締め切りがあるものは終わらせておいて、予定も完全に空けておくようにしています。

 

夕方、バーに行くと既に何人かの知っている人がいて、チェリストが最近手に入れた長方形の断面の芯のシャープペンシルについて語っていました。

それはマークシートを一書きで塗れるように工夫されたもので、学生用のとても安価で買うことができるものとのこと。

チェリストはそのシャープペンシルは楽譜を書くのにとても便利だと言っていました。

長辺を五線紙に垂直にして、縦線は細く、横線を太く書くようにすると、ミュージック用の万年筆と同じように使うことができます。

飄々とした彼がそういう学童文具について熱く語るのを見ていて、皆が微笑ましい気持ちになりました。

 

その夜、トロンコはボンクと一緒にクアドリフォリオのご夫妻に作ってもらったペンケースSOLOを皆に紹介しました。

作りのユニークさ、色艶の美しさなど、今までの万年筆を入れるペンケースになかったものを備えているSOLOに皆大いに共感してくれて、大好評。

全員の分を作ることになりました。

トロンコはクアドリフォリオのご夫妻に、革の色付け加工であるパティーヌの色見本をもらっていたので、それを皆に見てもらって、一人ずつ色を決めて行きました。

10色ものフィレンツェのセンスによる色合いは、どれもムラのあるアンティークぽさと透明感を併せ持っています。

それぞれ個性に合う色を悩みながら選ぶのは、とても楽しそう。

そんなみんなを見ているととても幸せな気持ちになり、このペンケースを作ってくれたクアドリフォリオのお二人に感謝しました。

 

このバーでの夜、トロンコが一番心動かされたのは、大学の先生の3年連用日記でした。

彼女は、日頃は持ち歩かないけれど、トロンコにそれを見せるためにわざわざ持ってきてくれたのでした。

3年前からつけ始め今年で終わるというその日記帳は、彼女らしいとてもしっかりとした文字で書かれていて、その時の覚書などメモの類、切り抜きなども貼られていて、3倍くらいの太さに膨らんでいて、ゴムバンドで留められていました。

まずトロンコが感心したのは、その日記帳の製本と装丁の丈夫さでした。

ページは全く外れていないどころか、買ったときのままの状態を保っていて、表紙も痛んでいない。

日本のライフというメーカーのものですが、そのメーカーの仕事に、派手さはないけれど誠実な実直さを感じました。

日記帳の仔細を見た後、彼女のこの日記帳に対した時間を想いました。

3年間、多分いろんなことがあったと思うし、いろんなことを考えたと思います。

研究者としての生活は日々努力の積み重ねの上に成り立っているので、辛いと想うこともあったと思います。

そういった想いが詰まっているその日記帳はとても尊いと思いました。

こういう想いを受け止めるには、ライフのような誠実な製品を作る会社でないと勤まらないのではないかと思います。

そのモノの良さは3年後にしか分らないけれど、その良さを知ると代わりとなるものはきっとありません。

大学の先生の日記帳を見ることができたことはいつまでも忘れないだろうと、トロンコは思いました。

 

夜が更けて、日付が変わりそうな時間、皆それぞれの家路につき始めました。

トロンコは帰りのローカル線の中、優しい気持ちで田園地帯の続く夜景を眺めていました。

 

 

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このページは、旅の扉 writing lab blog 管理人が2012年9月25日 11:45に書いたブログ記事です。

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