尾道にて

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トロンコは尾道の町の雰囲気がとても好きでした。
多くの作家が東京を出て、たどり着き、この町の風景や人間模様にインスピレーションを得て作品を残していますが、それも分る気がする。
尾道の山の中腹まで上っている狭い通路に沿って身を寄せるように建っている家々、眼前の島によって視界が狭められている風景をいつまでも飽きずに見ていることができるし、この風景を見ていると、なぜか都会よりも人の営みについて考えさせられる。
尾道の町の印象はトロンコの心の深いところに降りて、いずれまた何かの時に浮き上がってくるのだろうと思いました。
トロンコは尾道の商店街から外れたところにあるバーに、ボンクに会いに行きました。
お酒を飲まないトロンコは、バーのようなお酒を飲むようなところに初めて来る時いつも気後れしてしまいます。
子供の頃、トロンコはゲームセンターの雰囲気が苦手で、たまに友達について行くことがあっても、一切ゲームに触れず、1秒でも早く出て行きたいと思う子供でした。
そのゲームセンターでの気後れと同じ気持ちをトロンコはお酒を飲む店で感じていて、自分の場所ではないような気がしてしまうのです。
ボンクがいるというバーの扉を開けて、店の中に入りました。
他のお客様と楽しそうに話しているボンクはすぐに見つかりました。どうやら靴の話で盛り上がっているようです。先週も靴の話で盛り上がっていた様子なので、ボンクはそれからずっと靴の話で盛り上がっていたのかな、とトロンコは思いました。
トロンコはいつものようにノンアルコールの甘いカクテルを注文しました。
美味しい甘いカクテルを出してくれるか、そうでないかでトロンコはそこにいてもいいかどうかを判断するところがあります。
ボンクとトロンコは再会を喜びました。同じ日本にいながら別々に行動していて、それぞれ行きたい場所を訪ねていましたので、久し振りにボンクの顔を見るような気がしました。
靴の話ではコードバンの靴を雨の日でも履くというボンクに対して、他の人はひどい時には水膨れのようなものが出切るから履かないと言います。
トロンコも他の人と同じように思っていて、そのためにコードバンの靴に対して敬遠していたところはありました。
でもボンクがよく履いているオールデンのVチップは光沢や色むら、造形など、本当にかっこよく、ちゃんと天気予報を気にしながら履いてみたいとも思うのです。
オールデンのコードバンの靴の最も良いところは、新品の状態よりも履き込んで味が出た時が一番良いと思い、それはボンクの言う通りだと思います。
大事に手入れして何年も履くことができる靴で、そんなものをトロンコはこれから手に入れていきたいと思うのです。
トロンコはボンクとこれからそんな何年でも使うことができるものを作ることができたらいいなと、いつも通りぼんやりと考えました。

 

 

 

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このページは、旅の扉 writing lab blog 管理人が2012年11月 6日 11:19に書いたブログ記事です。

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