それぞれの出発の1931ホワイトゴールド

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トロンコは手紙を書くときによく使うペリカン1931ホワイトゴールドの万年筆で、ボンクに手紙を書きました。

 

世界中を旅して、写真を撮っているボンクがいつ自宅のアパートメントに帰ってきてこの手紙を読むのか分からないけど、その方がいいと思いました。

Eメールはすぐに相手に届きますが、時間が過ぎれば流れていってします。それはフェイスブックもツイッターなども同じで、インターネットを介した情報はどうしてこんなに時間とともに流れていってしまうのだろう。

やはり時間に流されず、とどまる力が強いのは手紙など手で書いたものだとトロンコは思っています。

この用事はとても大切なことだけど、急いでいるわけではない。

この町に起こっていることをボンクに話して、どう思うか意見を聞きたいと思ったのでした。

 

ペリカン1931ホワイトゴールドはボンクも持っていて、出会った時にお互い同じ万年筆を持っていることが話題なりました。

発売されたのは2000年。

当時トロンコはこの万年筆をお店のショーケースで見て、他の万年筆と何か違うと思えてとても欲しかったけれど、当時のトロンコにはとても買うことができるものではありませんでした。

月日が過ぎて、ペリカンのその小さな万年筆のことはいつも心のどこかにあったのですが、発売されてから日が経つにつれてお店でも見ることができなくなりました。

1931本しか作られていないため、もう完売してしまったのだと思っていました。

 

トロンコがその万年筆に再会したのは、紀行作家として原稿を書き出したばかりの時でした。

仕事は安定しているとは言えず、将来どうなるか分らなかったけれど、なぜか何とかなると楽観的だったし、自分の未来は明るい、今の自分には無限の可能性があると思っていました。

そんな時に旅に出た小さな町の小さなペンショップでトロンコは、ペリカン1931ホワイトゴールドを再会しました。

 

他のペンとは区別されていて、お客様が試筆するデスクの上に置かれていました。

聞いてみるとある日突然店に入ってきたので、ここに置いて買い手を待っている。1週間待って売れなければ、自分が買おうと思っていると店主が言いました。

トロンコは思い切って1931ホワイトゴールドを買うことにしました。

以前したいと思っていて、できなかったことを解決していくことが新しい生活を始めた自分への励みになり、前に進む力になるような気がしていました。

念願の1931ホワイトゴールドはかなり硬いペン先の万年筆で、締まった書き味からとてもキレのある線を書くことができました。

インクがたくさん出る今の万年筆とは違う、抑えた付けペン先のような文字がトロンコはとても気に入りました。

 

この万年筆は1931年のモデルの復刻で、デザインは当時のままで吸入メカニズム、ペン先などを今の技術で作られています。

ペリカンがこの万年筆の硬いペン先を付けたのは1931年。当時のこの万年筆特有の線を、筆圧が強くなった今の人にも書けるように仕向けたのではないかとトロンコは思いました。

 

当時の人はボールペンを使っていなかったので、今の人に比べて筆圧も軽く、上手に万年筆を使っていたことは、他のペリカンの万年筆や他社の万年筆のペン先がものすごく柔らかいところからも推測できます。

柔らかいペン先を巧みに使って、キレのいい文字を書いていた戦前の人たちに思いを馳せながらトロンコは夢中で新しく手に入れたばかりの1931ホワイトゴールドで文字を書きました。

 

当時すでに写真家として世に出ていて認められていたボンクはきっとこの万年筆を発売されてすぐに手に入れたのだと思いました。

トロンコのように考え込んでタイミングを逃さず、いつも迷いのない行動をとるボンクのことだから、欲しいと思ったらすぐに行動を起こしているはずでした。

きっとその時がボンクのこの万年筆を手に入れるタイミングであって、トロンコのタイミングはだいぶ遅れたその時だったのだと思います。

世界に1931本しかない万年筆を二人が持っているということに、トロンコはボンクとの縁を感じました。

きっと二人の道は始まりや今までの道程は違っていてもどこかで交わるようになっているのだとトロンコは思いました。

 

 

トロンコ3.jpeg

 

*今回は万年筆の話でスペースがいっぱいになってしまいました。でもペリカン1931ホワイトゴールドの万年筆は、偶然ですがWRITING LAB.の男性メンバーは全員持っている万年筆です。

きっとそれぞれこの万年筆には思い入れがあって、特別な思いでこれを手に入れたと思っています。

 

ストーリーは来月からまた進んで行くと思います。その時にはボンクもトロンコからの手紙をきっと読んでいると思うから。

 

*今月のテーマは「万年筆」です

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このページは、旅の扉 writing lab blog 管理人が2013年4月 2日 11:31に書いたブログ記事です。

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