二人の再会

| コメント(0) | トラックバック(0)

ボンクが撮影旅行から帰ると、郵便受けにトロンコからの手紙が入っていました。消印を見ると1か月前に出されたものです。

万年筆で書かれている見慣れた文字の封筒を見て、懐かしい気持ちに急かされてすぐに読み始めました。

 

落ち着いたのんびりとした文体の手紙でしたが、そこにはトロンコが住む町のために何かしたいと思っていることが書かれていて、ボンクにも協力してほしいとのこと。

トロンコがこういうことを言ってくることはとても珍しいことだとボンクは思いました。

トロンコはいつでも相手の時間や都合を尊重していたし、自分一人でいつも行動してきました。どんな大変な時でも、一人で黙々と自分の道を進んでいたように見えました。

 

ボンクは長い撮影旅行だったので、しばらく休みをとって、ニューヨークの自宅でのんびりするつもりでした。

トロンコはいつでも都合のいい時に来てくれたらいいと書いていましたが、すぐにトロンコのところに駆けつけたいと思いました。

撮影旅行で撮ってきたものの整理はトロンコのところで時間を見つけてすればいいと思って、愛用のボストンバッグに詰めて持って行くことにしました。

最近ボストンバッグを持つ人が少なくなっていますが、ボンクはいつもこのボストンバッグを持っていて、木型がピッタリと足に合う靴と同じブランドのそれはボンクのトレードマークになっています。

 

トロンコはどんな場所を永住の地にしたのだろう。そしてどんな理想の生活を手に入れたのだろう。

ニューヨークからトロンコの町の最寄りの大都市の飛行場までは45時間で行くことができます。

そこから2時間ほど汽車に乗って、トロンコのいる町に着くことができる。

トロンコは駅までボンクを迎えに来ていました

小さな駅の小さなホームで再開した二人は満面の笑顔で喜び合いました。

トロンコは相変わらず口数が少ないですが、二人は近況を言い合いながら、トロンコの家まで歩きました。

トロンコの家は暖炉のあるリビングルームが1階にあり、2階には寝室が2部屋。

ひとつをボンクに使ってもらいたいと、小さな机とベッドが運び込まれていました。

小さいけれど、とても居心地の良い部屋、家でした。

 

ボンクの部屋から町が見えました。

町はとても小さいですが、きれいで落ち着いた様子。住人誰もが幸せに暮らしているように見えるのに、トロンコの話ではこの国の他の田舎町同様に、若い人は仕事がなく都会に出て行かなければいけない状況になっていますし、仕事をしていた人たちも失業して町を出て行くことが少なくないとのことでした。

ボンクもトロンコに協力して、この町を何とかしたいという想いを強くしていました。

 

その日の夜からボンクとトロンコは自分たちにどんなことができるか、何をすればいいか話し合いました。

二人はまずこの町の良さを世界中に人に知ってもらいたいと思いました。

この国にも世界の中にもこの町のようなところは本当に無数にあって、この町だけの特別なものなど何も持ち合わせていませんが、少しでも多くの人にこの町のことを特別に思ってもらいたい。この町と縁を感じてもらいたい。

そうすることによってこの街を訪れる人が増えるのではないかと思いました。

地図を見ながらこの町のいろんなスポットを選んでいきました。

それらを紹介した文章と写真を本にして出そうということになったのです。

 

次の日から二人は精力的に町を歩き回りました。

トロンコは町の人たちの話を聞いて、ボンクは風景や人々のスナップを撮りました。

そんなふうに1か月の間二人は休まずに本の原稿を作りました。

そして町の印刷屋さんにそれらを持ち込んで、本にしてもらいました。

二人は自分たちが理想とする本ができたと思い、この本は多くの人に読まれると思いました。

 

 

*今回のテーマはとっても分りにくいですが「鞄」です。次回からライティングラボメンバーが鞄をテーマにお話しします。

 

 

トロンコ4.jpeg

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://writinglab.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/89

コメントする

このブログ記事について

このページは、旅の扉 writing lab blog 管理人が2013年5月 7日 12:10に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「大切なものと大好きなもの」です。

次のブログ記事は「ボンクの鞄」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。