導いてくれた職人技

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今月のテーマは職人技です。それぞれが職人技について語ります。

 

私が万年筆を調整したり、調整を施した万年筆を販売することで生きていきたいとボンヤリと思ったのは、ずっと前のことでした。

ある職人さんの仕事を目の当たりにした時で、その光景は今もインパクトを保って記憶に残っています。

確か震災の年で、私はまだ文具店の軒先の売り場を任されていた若い時でした。

この生活が一生続くのかと諦めに似た暗い気持ちと、人並みの仕事への情熱を持って淡々と日々家族3人で暮らす団地と職場を往復していました。

 

1回店の軒先にテーブルを出して、お客様の万年筆を販売しながら、無料でペン先調整する万年筆クリニックなる催しをしていました。

メーカーの工場から職人さんが来られて、お客様の書き方を見ながら万年筆を調整していきます。

 

持ち込まれる万年筆はそれぞれのお客様が書きにくいと思っているもので、職人さんはルーペでペン先をチェックして、「これは書きにくかったでしょう」と広島弁でお客様をねぎらうように声を掛けます。

それからお客様は少し気が楽になって、その万年筆がどのように書きにくいか、どのような経緯で今手元にあるか、なるべく使いたいと思っているということなどをお話になられます。

職人さんはすぐにゴム砥石が回転する機械でペン先を少し磨いて、お客様に少し書かせ、また磨いて「これで完成です」と言って渡します。

ほとんどのお客様が、とても書きやすくなったと、とても喜ばれます。

最後に職人さんは「どうぞ、お楽しみ下さい」と言ってお客様を送り出します。

 

このやり取りが1日に何十回と繰り返されるのを私は横でずっと見ていて、もちろん使っていなかった万年筆を使ってみたいと思ったけれど、そんな言葉のやり取りも含めた職人技に、私もこういう仕事がしたいと思いました。

 

大きな目標として宣言して、掲げたわけではなく、誰にも(妻にさえ)言わなかったけれど、密かに思い続けてきました。

書きやすいペン先だと思ったら、ポケットに入れるようになったメーカーが販売店に配っているルーペで見て、書きにくいと思ったらまた見て。

それを5年ほどしているうちに、書きやすいペンポイントの形が目に焼ついていました。

 

実際にペン先調整をしようと思った時、頭の中にある理想のペンポイントの形を作り出せばよかったのでいういk上達が速かった。

今自分に、その職人さんの技が備わったと言うつもりはないし、自分は職人ではなく販売員だと思っているけれど、たいていのペン先を自分の理想の形にする自信はあります。

でも、あの職人さんならどうするだろうといつも考えながらペン先調整をしています。

(Y)

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このページは、旅の扉 writing lab blog 管理人が2015年2月 1日 19:12に書いたブログ記事です。

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