怖い話~その1・S籐氏の場合~

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今月のテーマは8月ということで「怖い話」です。メンバーそれぞれの怖い(であろう)話・・まずはS藤氏から・・。

 

その1 子供(実話)


彼女が保母になって1年目の夏の事である。


彼女の人生設計は、24歳で結婚し、職場を退職し専業主婦になるという平凡なものだった。当時22歳である彼女はそのような夢の中で生きていた。

彼女が務める幼稚園はシナノキに囲まれ、大きなプールと運動場があった。
その夏の8月は、太陽の自己主張がいつになく激しく、容赦なく地球の表面を焦がしており、シナノキの影による安全地帯以外では、運動場はフライパン状態だった。
そこで彼女は子供たちと、運動場ではなくプールを使ってその日の遊戯をしていた。

そのうち、彼女は1人で建物に戻った。その理由は、日焼止めクリームを取りにいったのか、自分のカバンを取りに行ったのか、今ではもう分からない。
一応、彼女は子供たちの監視を同僚に頼んで行った。


彼女がなぜその部屋に行ったのかまったく不明である。

その部屋は建物の奥にある屋内の広い遊戯部屋であり、雨の日だけ利用する場所があった。


普段は子供達が明るく駆け回り、建物周囲を囲うシナノキによる木洩れ陽が窓から室内に投射される明るい部屋であった。

しかしその日に限り、外では灼熱の太陽が怒り狂っている一方、室内はクーラーもついていないのにひっそりとした冷気が漂っているように感じた。

外では日光で生き生きとしていたシナノキの木々たちも、中では不気味な影を落としていた。

その大きな部屋の床は珍しいウォールナット製であった。所々に木の年輪と黒々とした節があり、中には悲鳴をあげてる人の顔に口のように見えた。

それらの口は彼女にこれ以上入るなと警告しているようでもあった。

すると部屋の中央に、ポツンと3歳くらいの子どもが1人で、床にその重そうなお尻を下ろし、黙って床を見つめているのが見えた。

彼女はその子に話しかけたが、その子は座りながら床を見ていた視線を上げただけで、彼女の目をじっと見返すばかりにで何も言わず、動きもしなかった。

その目は限りなく虚ろで、深く深く別の次元へと吸い込まれそうだった。

彼女は、 多分この子は人見知りで、恥ずかしいからプールに行かずここで1人で遊んでいるのだと思い、プールに連れて行こうと思った。

そしてその子のフャフャした左手を取り、起こすためにグイとひっぱった。

 

 

彼女の悲鳴が起こった時、同僚はまだ外のプールで子供達たちと遊び始めたところだった。

その悲鳴は保育所の事務室にも届いた。その悲鳴の方向に向かい、事務室から他の職員も慌てて走ってきた。

するとそこには、床に座り込んだまま激しく泣きじゃくっている彼女がいた。

 

その背後には子供が座り込んでおり、ただ冷静にじっと彼女を見ていた。

 

 

・・・しかしその子の左手は、本来あるはずのない床の位置まで異様に伸びていた。

 

 

その後、この子(私)は近くのお医者さんで肩が抜けたのを直してもらい、彼女については私の母親がよくあることですよとか言ってなんとかショックを緩和したという事です。

 

 

 

来週はその2をお送りします。

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このページは、旅の扉 writing lab blog 管理人が2015年8月 7日 14:12に書いたブログ記事です。

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