桜の思い出~スタッフMの場合~

| コメント(0) | トラックバック(0)

IMG_6386.JPG※生家にあった桜の晩年

こんにちは!スタッフMです。長いものに巻かれる性格をしておりますので桜のお話をさせて頂こうと思います。

と申しますのも、新入学の思い出と言う物がこれと言って特別な物がなく、あまり印象に残っていないと言うのが本音のところであります。

その代わり桜についての思い出はそこそこあります。

 

私の生まれた家は築80年の銭湯でした。

銭湯と言えば富士山の壁画がイメージされるかと思いますが、我が湯の場合はあまりの古さに富士山の絵は霞んでしまっていてただの壁のシミに見えるほどでした。

私が生まれて3年ほど経った頃、阪神淡路大震災が発生。

震源からやや離れた明石市に住んでおりましたのでさほどダメージはありませんでしたが、男湯と女湯を隔てる大きな壁のど真ん中にヒビが入り、お相撲さんの張り手一発で男湯と女湯が開通してしまうほどの危うさを醸し出しておりました。震災後しばらくすると周りの一般家庭に家庭用風呂が急激に普及しお客様の数は激減。来てくれるお客様は超がつくほどのローヤルカスタマーばかりでしたので年々数は減っていきました。

そんな傷跡を残したまま(ある程度は修復済み)営業をしておりましたので本当におんぼろ屋敷そのもので、なにも誇れる物のない銭湯。

しかし年に1度、我が家の事を誰もが羨ましがる期間がありました。それが春、桜の咲く季節でした。

男湯側の脱衣所にある「せんだい(播州弁で前栽の意)」に1本の桜が植わっていて、毎年見事に咲き誇っておりました。(もっとも桜が終わったら地獄の毛虫まつりが)

家の年齢より年上の桜なのでもしかすると樹齢は3桁を回っていたかもしれません。

そう言う情報を知った上でその桜のことを見るとどこか仙人めいた雰囲気があるな~!と幼心に思い、根元に置かれた石の祠にはきっとカミサマがいるんだ~!と信じていました。

その桜を居住スペースである銭湯の2階部分から眺めることができ、毎年春が近づいてきたら毎日開花具合をわくわくしながら観察して過ごしていました。

 

そして私が15歳になり桜の花の数が年々減ってきたな~と思い始めた頃、我が家に猫が6匹やってきました。

まだへその緒が残っているような赤ちゃん猫がビニールに入れられ、近所の公園の草むらに捨てられているのを発見。

連れ帰っても親に猛反対されることは経験上解っていたので心を鬼にし見捨てようとしたのですが、頭上からおびただしい数のカラスの鳴き声が聞こえ、拾って帰ることにしたのです。

1年もすると立派な成猫となり家の中を好き勝手に動き回るようになりました。

そのうちの1匹はなぜかその桜のことが大のお気に入りのようで、木登りをして寄ってきた鳥を脅かしたりして遊んで、疲れると根元の祠で休憩をとったりと兎に角桜にべったりでした。

それから何年かした春の終わりに、その猫は息を引き取りました。

猫特有の白血病にかかったようです。

日に日に衰弱し、とうとう桜に上ることが出来ないまま春を終え逝きました。

なぜだか無性に桜がさみしそうに見えたので、その根本付近に埋葬しました。

それからは毎年、その桜が咲く頃になるとその猫が帰ってきたような気がして、ただただ眺めながら猫との思い出を振り返り、春の訪れを喜びつつ少し切ない気持ちになっていました。

 

数年後、お客様の減少が著しく経営し続けることが困難となり閉湯することとなり、それに伴い我々一家もこの銭湯から出ることとなりました。

引っ越しの準備が完了し、手荷物を残しほとんどの荷物を運び終えた夜、がらんとした家の中から花の散ったばかりの桜を母と二人で眺めていました。見納めと思うとずいぶん切ない気持ちになり、すこしばかり泣いてしまった事を覚えています。

家族の誰もがあえて話題に出さなかった、あの猫の事を思いました。

この桜と一緒に、ここで更地となってしまうのか、と思いました。

なぜだか無性に母がさみしそうに見えたので、その根本付近を掘り返しました。

そしてあの猫と一緒に家を出て、現在に至ります。

 

毎年桜を見ると、我が家に咲いていた桜よりずいぶん立派だな~と思いながら今は無きあの桜の事を思い出します。

私や母が産まれるずっと前からあの土地を見守り続け、毎年春の訪れを知らせてくれていた。

最後の方は枝も花もずいぶんと貧相になってしまっていたけれど、そこに何とも言えない美しさを感じていました。

今は立派な家が建ち、桜の木の気配は消え失せてしまっているけれど、思い出の中の桜は今年も満開でした。

ちょっぴり切ないですが、そんなこともあって私は桜が大好きです。

来年が待ち遠しいですね。

 

 

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://writinglab.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/284

コメントする

このブログ記事について

このページは、旅の扉 writing lab blog 管理人が2017年4月25日 14:25に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「桜の思い出~S等氏の場合~」です。

次のブログ記事は「ルーティーン」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。